2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J61455
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
押川 清孝 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞周期と癌化 / ユビキチン-プロテアソーム / タンパク質分解 / タンパク質複合体解析法 / SCF複合体 / Cul1 / TIP120 / NEDD8化修飾 |
Research Abstract |
近年、細胞周期の異常による癌化のしくみが解明されつつあることから、癌化と細胞周期が密接な関係にあることが示唆されている。つまりは細胞周期を理解することが癌化の解明につながると考えられる。そこで細胞間期(G1期)から複製期(S期)での細胞周期の制御に重要なはたらきをしているタンパク質分解システムの解明を目標に研究を進行している。G1期からS期においてはユビキチン-プロテアソームによるタンパク質分解経路によるサイクリンなどの分解が知られている。しかし、これらユビキチン化に必須とされるタンパク質複合体(Skp1-Cul1-F-boxタンパク質+Rbx1;SCF複合体)以外にも他のタンパク質がユビキチン化に関与していると示唆されているがその詳細は明らかではない。 今回は最近、開発されたタンパク質複合体解析法(Tandem Affinity Purification; TAP)を用いてSCF複合体のなかでも重要とされるCul1に結合するタンパク質の同定を行った。それら複合体形成タンパク質を生化学的に単離し、それらタンパク質を電気泳動によりさらに分離したのち、各タンパク質をゲル内酵素消化した。それら消化ペプチドを高速液体クロマトグラフィーで分離した後、部分ペプチドを自動アミノ酸シーケンサーで配列を決定することによりすべての複合体形成タンパク質を同定した。その結果、既知の必須複合体形成タンパク質以外に分子量120kDaのCul1結合タンパク質を新たに発見した。この新規Cul1結合タンパク質はアミノ酸配列からTATA-binding protein Interacting Protein 120(TIP120)であることが判明した。TIP120のCul1に対する結合が直接または間接的であるかをTIP120と各必須複合体との細胞内での過剰発現による結合実験で調べたところ、TIP120とCul1は直接結合していることが判った。しかも、既知のCul1結合タンパク質とは異なる部位で結合している結果も得られた。ところが、TIP120が存在するとCul1はSCF複合体を形成出来ないことが判明した。さらに、ユビキチン化の活性化に必須とされるなNEDD8化修飾もTIP120は抑制した。これらの結果から、今回、単離してきたTIP120という分子は、G1期からS期におけるユビキチン-プロテアソームによるタンパク質分解経路でのユビキチン化を負に制御しており、しいては癌化での細胞周期の異常を抑制できる可能性があることが示唆された。現在、これらの結果を論文として投稿中である。
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