2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J61460
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山田 哲也 自治医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 糖尿病 / インスリン抵抗性 / 肥満 / レプチン抵抗性 |
Research Abstract |
インスリン抵抗性を伴う肥満・糖尿病患者の増加が注目を集めている。その治療法としては、現在でも食事療法や運動療法が主要な役割を占めている。そこで、我々はエネルギー消費を増加させることが肥満やインスリン抵抗性を解消し、糖尿病の治療につながる可能性があると考え、モデル動物を用いて検討した。脱共役蛋白質UCP1(uncoupling protein 1)は褐色脂肪細胞のミトコンドリアで酸化的リン酸化を脱共役し、エネルギーをATP合成に向かわせることなく、熱として放散させる分子として知られている。肥満・糖尿病を発症させた後、この蛋白を代謝に係わる重要な組織の一つである内臓脂肪に後天的・異所性に発現させ、病態に対する治療効果を検討した。高脂肪食により肥満・糖尿病を発症したマウスの副睾丸周囲脂肪組織に、アデノウイルスベクターを用いてしUCP1遺伝子導入を行った。UCP1の発現は局所的・限定的で、全身のエネルギー消費量には増加を認めない程度であったにも拘らず、体重増加は抑制され、血糖値・血中脂質値の有意な低下、血中インスリン値の約4分の1への著減、GTT-ITTにて著明な耐糖能改善とインスリン抵抗性の改善を認めた。さらに、血中レプチン値の低下と摂餌量の減少を認め、レプチン感受性試験にて、高脂肪食負荷により生じたレブチン抵抗性の著明な改善が示された。しかし、皮下脂肪組織へのUCP1遺伝子導入においては、これらの治療効果はほとんど認められなかった。脂肪組織のUCP1の発現が局所的・限定的であるにもかかわらず、個体には様々な表現形が認められた。従って、UCP1を発現した脂肪組織が何らかの液性因子を分泌、あるいは神経系を介するシグナルを発信したと推測された。現在、UCP1を発現させることによって生じる遺伝子発現の違いを、DNAチップを用いて網羅的に解析している。
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