2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J72105
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹川 道也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 反陽子 / プロトニウム / ミュオン / 量子論 |
Research Abstract |
反陽子が水素原子と衝突し、原子内電子をたたき出すことにより陽子-反陽子系(プロトニウム)が生成される過程を考え、反陽子の主量子数・方位量子数に関する初期状態毎の捕獲断面積を純量子論的な手法を用いて求め、そのダイナミクスを詳細に理解する研究を試みた。まず初期状態の反陽子の波動関数を、基底電子状態における水素原子の電荷分布に基づく静電ポテンシャル内の運動として計算すべき式を導出し、そのプログラムを作成した。次に終状態の放出電子の波動関数であるが、電子とプロトニウムの間には、十分離れてもその距離の二乗に反比例する長距離相互作用が存在する。そこで、その効果を厳密に取り入れた相互作用を用意し、電子の運動を記述するシュレーディンガー方程式から解くべき式を導き、それを解くプログラムを作成した。また、入射粒子と放出電子の組み替えの効果は一次で取り入れた。続いて、得られた上記の数値波動関数から全系の波動関数を求め、その漸近形から得られる散乱振幅を用いてプロトニウム生成断面積を求める式を導出し、その計算プログラムを作成した。 以上のプログラムを用いて、プロトニウムの生成断面積計算を行った。その結果まず、(既に知られていることだが)主量子数が5程度の小さい状態に捕獲される断面積は非常に小さいことが確認された。一方、その生成断面積が大きくなるのは、主量子数30程度ということが予見されてきたが、今回作成したプログラムでは、取り入れるべき状態数の多さと要される計算精度の高さのために、そのような計算には莫大な時間が必要であることが分かった。そこで、詳細な計算のチェックを行うために、反陽子だけでなく任意の負電荷重粒子衝突の問題に対応出来るようにプログラムを改良し、反陽子に比べより低い主量子数の状態に捕獲される断面積が大きいと考えられるミュオン衝突の問題に適用した。現在その計算を継続中である。
|