2004 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板のNETSCAN法によるニュートリノの研究
Project/Area Number |
02J72602
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野中 直樹 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DONUT / NETSCAN法 / OPERAフィルム / Micro Segment Chamber / 宇宙一次電子FLUX / タウニュートリノ |
Research Abstract |
名古屋大学F研究室と富士フィルムとの共同で開発した大量生産用原子核乾板OPERAフィルムを用いて、今年度5月31日に気球による宇宙線実験を行った。タウニュートリノ直接検出実験DONUTで私が開発してきたNETSCAN法と高速飛跡読取装置UTSを適用する事で、今までECCを用いた気球実験では調べる事が出来なかった大気cut off近傍の低エネルギー電子のフラックスを測定する事が可能になったためである。この宇宙線研究の分野では、検出器の面積とその検出可能な角度範囲が重要であり、その点で有利なECCが活躍してきた。問題は解析に時間がかかるという点であったが、UTSとNETSCAN法で問題が大幅に改善されてきている。そこで、私は、OPERAフィルムを用いて新型飛跡検出器Micro Segment Chamber(以下MSC)を開発、製作した。MSCは、二つのエマルションチェンバーを重ね、一方を観測中に徐々にシフトさせる事で、記録された宇宙線が何時入射したかわかるような機構をもたせたものである。計画どおり2004年5月31日、三陸大気球観測所においてMSCを気球に搭載し、上空36kmで14時間の宇宙線の記録に成功した。その後、UTSによる飛跡の読み取りを80cm2にわたって行い、NETSCAN法による電子検出をおこなった。その結果、120個の電子(エネルギーは10GeV近傍)を検出する事に成功し、そこで求めた宇宙一次電子のFLUXを12月に宇宙研究所で行われた大気球シンポジウムで報告した。現在、さらに100GeVまでの電子FLUXを調査するために、スキャン面積を増やす作業をすすめている。また電子同定の際、問題になる陽子反応によるBack Ground量を見積もるためにテスト実験を計画中である。 また、過去にすでに行われているエマルションを用いた気球実験の中には、今回当てた宇宙線量の百倍以上に相当する量の露出に成功したものがある。これらの原子核乾板にUTSとNETSCAN法を適用する事で、さらに詳細な一次電子FLUXを出す事ができないか検討中である。 DONUT実験では、私が開発したNETSCAN法により、全体の80%までのニュートリノ反応をECC中で見つけ出す事に成功しその中から新たに一つのタウニュートリノ反応を見つけ出した。残りの20%の反応候補探索を現在も続けているところである。
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Research Products
(4 results)