2004 Fiscal Year Annual Research Report
国際環境条約の国内実施過程における政治学・法律学的考察
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02J72702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 はるか 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境 / 条約 / 条約の国内実施 / オゾン層保護 / 実施研究 |
Research Abstract |
本年度は、これまで行ってきたオゾン層保護のためのウィーン条約・モントリオール議定書を題材とした条約の国内実施過程に関する研究の取りまとめを行い、論文にまとめた。 本研究は、地球環境問題に対して国内行政がどのように対応しようとしているか、そしてどのような影響を受けているのか、地球環境条約と国内行政とが接する「条約の国内実施過程」に焦点を当て、分析することを目的とした。まず、「条約の実施過程」を次のような構成要素に分解し、「条約の国内実施過程」の分析枠組みを提示した。第一に、国際交渉を通じて形成された政策課題、すなわち国際会議で採択された条約・議定書を国内で「受容」する過程、第二に、条約・議定書によって課された義務内容を国内対策に翻訳・変換する過程(「国内立法化」、当該課題の既存の国内政策への「位置づけ」、当該事務を所掌する担当部局の「配置」が行われる)、第三に、国内対策を「執行」する過程である。次に、日本において、どのような要因が履行確保を担保したのかを明らかにするために、国内での履行を担保する要素を、(1)国際合意を国内政策として受け入れようとする政府担当官庁の「遵守の意思」と「国内関係者の支持」、(2)国際合意の内容と照らして、履行確保可能な仕組み(法制度)がつくられたかという「法制度の実効性」、(3)実施過程における国内の行為主体の対応・「行動変化」の3点に分解して、条約の国内実施過程の各段階において、これらの要素が確保されたか否かについて検証した。 本研究では、条約の国内実施過程が、所与の諸規律の集合からなる「政策の構造」によって規定されるだけでなく、相当程度、「実施の構造」における主体間の相互作用を通じて形成された可変的・動態的な社会のコード(技術、企業、業界、ないし国際貿易における経済性のコード)に規定されるということを指摘することができた。
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