2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J72802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 正人 京都大学, 化学研究所, 学振特別研究員(PD)
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Keywords | NMR / 超臨界 / フェノール / H-D交換 / 水和効果 / 疎水性 / 4級炭素 / ビスフェノールA |
Research Abstract |
15年度は主に亜臨界・超臨界水中における反応機構の解明を目標に、幾つかの化学反応についてNMRを用いて解析した。まず、フェノールにおけるH-D交換の反応速度論的解析を行った。210-240℃の亜臨界域では、オルト、パラ位の両方で数時間の単位でH-D交換が進行することが判った。孤立分子の電子密度計算より、両者の反応性はパラがやや高いかほぼ同じであることが判っているが、それに反し、この反応条件ではオルトの反応が50%程度早く、水和の効果が現れている。反面、350℃までの温度域ではメタ位に全く反応が進行しない。超臨界域ではオルト・パラは瞬時に置換し、反応性の低いメタ位でも、水密度0.4g/cm^3において十時間のオーダーで置換が進行した。水密度を下げていくと次第に反応速度は減少し、また、パラに対するオルトの選択性も上昇した。水分子の局在化による反応選択性をより上げるため、疎水性のベンゼンに少量の水を添加した超臨界混合溶液中で反応させ、オルトだけを選択的に重水素化することに成功した。またこの水熱反応は可逆であることも利用し、重水素化の自在なトポロジカル制御を完成させた。この亜臨界・超臨界水、およびベンゼン・水混合溶液を用いた斬新な位置選択的重水素化法について、特許出願に向けて準備中である。また上記の結果について日本化学会年会で発表し、好評を博した。同時に論文にもまとめ、Journal of Chemical Physicsに投稿して受理され(AIPID number:009424JCP)、間もなく掲載予定である。 これ以外に、亜臨界・超臨界水中における4級炭素におけるC-C結合切断の研究も進行中である。4級炭素にメチル基2つとフェノール基とフェニル基の付いた4-クミルフェノールから出発し、フェニル基のパラ位に水酸基を付加したビスフェノールAと、フェノール基から水酸基を除いた2,2-ジフェニルプロパンについて反応速度を求め、フェノールの場合と同様に、超臨界水の密度変化およびベンゼン・水混合溶液を用いて水和効果を解明しつつある。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] M.Kubo, T.Takizawa, C.Wakai, N.Matubayasi, M.Nakahara: "Noncatalytic kinetic study on site-selective H/D exchange reaction of phenol in sub- and supercritical water"Journal of Chemical Physics. 120(印刷中). (2004)