2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J72802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 正人 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | NMR / 超臨界水 / フェノール / フェノレートイオン / H-D交換 / ラマン / 水素結合 / メタノール |
Research Abstract |
最終年度にあたる16年度は、まず、亜臨界・超臨界水中におけるフェノールのH-D交換のNMRによる反応速度論的解析について、J. Chem. Phys.に発表した。亜臨界・超臨界水、及び超臨界水・ベンゼン混合溶液を用い、水の密度制御を行うことによって、H-D交換の完全な位置制御に成功した。オルト・メタ・パラの全ての組み合わせの置換体について、位置選択的に重水素化したフェノールを合成する手法を確立した。更に、中性のフェノールと比較したフェノレートイオンの高温高圧水中の反応速度についても解析を行った。フェノレートの場合、各置換位置の反応性はフェノールと比較して増大し、異なる選択性を示した。これらの結果について10月の高圧力学会で発表する。 また8月の国際学会において、ラマン分光法による水素結合性超臨界流体の構造の解析について発表した。水などの水素結合の状態を測定するにあたり、ラマンを含む振動分光はNMR等と比較して、その平均値だけでなく分布に関する情報も提供する点において有益な測定法である。NMRによる超臨界水および水溶液の解析を補完する目的で、当研究室とJEOLと共同で新しい高温高圧流体の高感度ラマン測定装置を開発し、今まで測定が不可能であった低密度の超臨界水の測定を可能にした。今回は特に水素結合状態の密度依存性に着目し、3×10^<-4>g/cm^3以下まで至る孤立分子模様の超低密度から広範囲に渡って測定することに成功した。また、超臨界水との比較のため、同じく水素結合性流体である超臨界メタノールの実験も同様に行った。メタノールの臨界温度は水よりも低く、臨界温度から更に温度を上げていったときの変化をより容易に観察できた。NMRやシミュレーションの結果との比較から、超臨界水における水素結合の密度依存性は局所密度一元論では説明できないことを示した。この結果について論文を準備中である。
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Research Products
(1 results)