2003 Fiscal Year Annual Research Report
自然言語による行動制御のための言語行為の理解過程の分析
Project/Area Number |
02J72902
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三好 潤一郎 千葉大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 言語行為 / 発話行為 / 言語哲学 / 行為 / 発語内行為 / 発語媒介行為 |
Research Abstract |
第一に、言語行為論の基礎として、アンスコムとディヴィドソンによる行為論とゴールドマンによる行為論を比較検討した。後者には、行為タイプの同定、動詞の時制および時間的な副詞句の処理、「例化する(exemplify)」の意味、レベル生成の分類と言語行為論の行為類型との対応等に問題があることが見出された。したがって、前者の行為論が言語行為論の基礎としては望ましいと考えられるが、しかし前者にも因果関係の内包性や行為文の論理形式との齟齬などの問題点がある。この内容は、7月13日北海道大学で行われた"First International, Workshop on Language Understanding and Agents for Real World Interaction"で"The Fine-Grained Theory of Acts and the Speech Act Theory"という題目で発表した。 第二に、発語内行為および発語媒介行為に関連する間接的言語行為の分析について、新しい枠組みを提案した。従来の間接的言語行為の研究では、聞き手がいかにして発話を理解するかがもっぱら問題とされた。しかし、会話は資源の配分または利益の分配を決定する手続きとしてとらえることができ、間接的言語行為は話し手の戦略の一種と理解できる。そうすると、なぜ話し手がその間接的言語行為を遂行するのかが、話し手による自己の利益の最大化として説明可能となる。この内容は、1月24日慶応大学で行われたシンポジウムで「発話理解と言語行為論」という題目で発表した。 最後に、行為論・出来事論研究の一種の副産物として、文に対する副詞句"in a dream"が伝統的な方法では意味論的に処理できないことが判明した。すなわち、"S in a dream"が"S"を含意することがあり、また"in a dream"はオペレータとは考えられず、かつディヴィドソン的なアプローチもそのままでは当てはめられない。そこで夢の中に現れる非現実の対象を出来事の属性とみなして処理する方法を案出した。この内容は、3月2日ハインリッヒハイネ大学デュッセルドルフ(独)で行われた"Compositionality, concept, and recognition An Interdisciplinary Conference in Cognitive Science"で"Actions, Dreams, and Compositionality"という題目で発表した。
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