Research Abstract |
所属する研究機関では,1000トンの液体シンチレータを満たしたニュートリノ検出器(カムランド)を用いて,ニュートリノの研究を行ってきた.本年度は,特に原子炉からの反ニュートリノの測定を実施し,その結果,原子炉の中での核反応から予測されるニュートリノの量に比べ,その約半分しか我々のKamLANDまで到達していないこと,即ち「原子炉反ニュートリノの欠損問題」を世界で始めて示した. 上記の研究と平行して,太陽ニュートリノ観測を目指して,研究を進めている.太陽ニュートリノは現在よりも低いエネルギーの現象であるため,一層の低バックグランド化が不可欠である.これに向け,現状把握,基本的な物理量の測定等が行われた.それらの内主な成果を以下に具体的に列挙する. ・エネルギー閾値を下げた測定を実施して,現在の低エネルギー部分のバックグラウンドは,主に^<85>Krと^<212>Poであり,重金属と希ガスの除去法の開発が必要であることが示された.また,液体シンチレーター以外からのバックグランドは大きくなく,現状で十分であることが分かった. ・液体シンチレーターからの重金属の除去を行うため,鉛(^<212>Pb)の,純水中への抽出の効率を測定した.この結果,シンチレーター中の鉛は,極少量しか純水中に抽出されず,ガラス容器に吸着されることが判明した.これは,の大方の予想と異なるもので,シンチレーターの純化を行う上で非常に重要な結果であると同時に,有機溶媒中での放射性元素の存在形態としても興味深い話題であり,今後更に研究を進める. ・放射性の希ガスである,ラドンガスを用いて,液体シンチレーターから中の希ガスの除去効率の計測を行った.希ガスの除去の原理は,窒素ガスを用いて液体中の希ガスを追い出すことにある.我々は,気泡法,噴霧法,膜交換法を試験し,除去効率が40-60%であることを示した.また,低窒素ガス圧下では,ラドンガス除去効率が上がることを示した.
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