2002 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚ストループ課題施行中の絶対音感保持者における音認知の特徴の研究
Project/Area Number |
02J81904
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 亨弥 新潟大学, 脳研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脳波 / 事象関連電位 / 絶対音感 / 聴覚ストループ効果 |
Research Abstract |
ストループ効果とは,例えば赤色で「緑」と書かれた文字を読む場合(不一致条件)には,緑色で「緑」と書かれた文字を読む場合(一致条件)よりも反応時間が延長する心理学的現象のことをいう.絶対音感保持者では,音刺激が自動的に音名へ変換されると考えられるため,音名と音高が一致しない音刺激を呈示することにより,聴覚においてストループ効果が引き起こされることが報告されている. 本年度の実験は,刺激音において歌われた音名を答える音名課題と,音高を答える音高課題の両方を,一致条件と不一致条件について,それぞれ60試行ずつを,絶対音感保持者6名に対して行った.回答法は,以前に伊藤らによって行われた,350msの刺激音を呈示した1s後に合図を与えて声で回答する方法(発声課題)ではなく,刺激音呈示後1s以内に鍵盤の該当するキーを押して回答する方法(キー押し課題)とした.つまり刺激音の呈示間隔が3sから1sに短縮するため,被験者は刺激音に対して一層の集中が求められることになる.計測された脳波を刺激音呈示時刻を基準として同期加算平均し,事象関連電位を得た. 実験結果からは,頭頂部(Cz)においてN1の振幅が発音法に比べてキー押し課題では大幅に小さくなること,一致条件と不一致条件との差分を見ると,刺激後200ms付近において,発声課題では音名課題と音高課題との違いが明らかなのに対して,キー押し課題では音名課題と音高課題との間に差が見られないことがわかった.また,発声課題では刺激後200ms付近において,一致条件より不一致条件では陰性が強くなる所見が伊藤らによって得られていたが,キー押し課題でもその頂点潜時はほぼ同じであった.すなわち,反応様式を問わず,ほぼ自動的に起こるプロセスは,この陰性電位に関係しているものと考えられる. 来年度は被験者数を増やし,絶対音感非保持者においても実験を行う予定である.
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