2002 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインシグナル抑制因子SOCS-1の関与する疾病の発症機序の解明
Project/Area Number |
02J82008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 大 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サイトカインシグナル / 癌抑制遺伝子 / 造血器腫瘍 / メチル化 / LPS |
Research Abstract |
1.サイトカインシグナル抑制因子SOCS-1の人の疾患への関与を明らかにするために,急性骨髄性白血病(AML)90例および血球系細胞株17種の遺伝子解析を行った.臨床検体で2例,細胞株(Jurkat細胞株)で1例,新規の変異を同定した.AMLでみられた変異はコドン198におけるCからTへの変異であり,その結果198番目のプロリンがセリンへ置換されることが予想された.急性リンパ球性白血病(T細胞)由来の細胞株であるJurkat細胞においては,コドン164における1bpのG欠損が存在した.野生およびこれらの変異SOCS-1の発現ベクターを作製し癌遺伝子TEL-JAK2の分解能に関して検討したところ,Jurkat細胞株でみられた変異においては,その分解能が欠如していた.次に遺伝子のメチル化について検討した.AMLの検体においては72%に,細胞株においては52%にSOCS-1遺伝子のメチル化が認められた.細胞株においてはメチル化とSOCS-1の発現低下との間に強い相関がみられ,この発現低下は細胞を脱メチル化処理することにより回復した.以上のことから,AMLや造血器腫瘍由来の細胞株においては,SOCS-1は主にメチル化によって発現低下がもたらされていることが明かとなり,癌抑制遺伝子として機能していることが支持された.一方,他の臨床検体(非小細胞肺癌,SLE)や非小細胞肺癌由来の細胞株においては,意義のある遺伝子変異は同定されなかった. 2.LPSシグナルにおけるSOCS-1の作用点を明らかにするために,SOCS-1安定発現株を作製した.この細胞株においてはLPS刺激によるNF-kBの活性化は野生株と同等であったが,STAT1のセリン,チロシンリン酸化が減弱していた.共発現系における免疫沈降の結果から,SOCS-1のターゲットをIRAKと推測し,詳しいメカニズムについて検討中である.
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