2002 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制受容体PD-1による腫瘍・移植・自己免疫疾患の病態制御機構の解析
Project/Area Number |
02J83803
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩井 佳子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | PD-1 / immnoinhibition / tumor / T-cell tolerance / costimulatory molecule |
Research Abstract |
PD-1遺伝子は、CD28ファミリーに属する負の免疫制御遺伝子である。PD-1に対するリガンド、PD-L1は他のB7分子と異なり、末梢組織で恒常的な発現がみられ、癌細胞でも発現がみられることから腫瘍免疫におけるPD-1/PD-L1シグナルの役割について解析した。 PD-L1発現による腫瘍免疫抵抗性を検討するため、マスト細胞種株P815(DBAマウス由来、H-2L^d)にPD-L1遺伝子を導入して、親細胞株(P815)とPD-L1発現細胞株(P815/PD-L1)に対するH-2L^d特異的CTLの細胞傷害活性を比較した。親細胞株に比べPD-L1発現細胞株で細胞傷害活性の低下がみられ、抗PD-L1抗体投与によりPD-1/PD-L1シグナルを阻害すると細胞傷害活性が回復することから、腫瘍細胞上のPD-L1を介して細胞傷害活性が抑制されることが示唆された。PD-L1発現による腫瘍増殖に対する効果を調べるため、PD-L1発現腫瘍(P815/PD-L1)を同系マウスに皮下移植すると、親細胞株(P815)に比べて、腫瘍の増大と腫瘍の浸潤および転移の促進がみられ、生存率の低下を認めた。そこでPD-L1発現腫瘍移植マウスに抗PD-L1抗体を投与してPD-1/PD-L1シグナルを阻害すると、腫瘍の増殖が顕著に抑制され、個体の延命効果を認めた。このような抗PD-L1抗体による抗腫瘍効果はPD-L1を内因性に発現しているJ558マウス骨髄腫細胞においてもみられ、PD-1欠損マウスにおいては腫瘍の増殖が完全に抑制された。 以上の結果から、癌が宿主の免疫監視から逃れるメカニズムの一つとしてPD-1/PD-L1シグナルが極めて重要な役割を果たすことが示唆され、新たな癌免疫療法としてPD-1/PD-L1シグナル阻害剤の臨床応用が期待される。以上の研究成果は論文として発表した(PNAS,2002,99,12293-7)。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yoshiko Iwai et al.: "Involvement of PD-L1 on tumor cells in the escape from host immune system and tumor immunotherapy by PD-L1 blockade"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 99・19. 12293-12297 (2002)
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[Publications] Yoshiko Iwai et al.: "Microanatomical localization of PD-1 in human tonsils"Immunology Letters. 83・3. 215-220 (2002)