2002 Fiscal Year Annual Research Report
オーロラキナーゼと直接相互作用する蛋白質Brm1およびTsl1の機構解析
Project/Area Number |
02J84502
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久能 樹 京都大学, 放射線生物研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | オーロラキナーゼ / ヒストンH3 / リン酸化 / ブロモドメイン / コンデンシン |
Research Abstract |
オーロラキナーゼBは、M期特異的なヒストンH3のN-末端にあるSer10をリン酸化するキナーゼとして、さらに、スピンドルチェックポイントの構成因子として機能し、正常な染色体の凝縮や分配に必須である。また、スピンドルの脱重合や細胞質分裂にも関与するなどM期を通じて重要な役割を演じている。現在までにINCENP(Inner Centromere Protein)及びSurvivin/Bir1と複合体を形成し、細胞周期のG2期からM期の前中期にかけて染色体上に局在し、中期には、動原体付近に移動し、後期から終期にかけては、分離した姉妹染色体の中間に再局在することが知られている。しかしながら、オーロラキナーゼBの機能を制御する因子は、現在のところわかっていない。我々は、Two-hybrid法により分裂酵母のオーロラキナーゼBであるArk1と相互作用する囚子のスクリーニングを行い、制御因子の単離を試みた。その結果、Pic1及びBrm1(Bromodomain containing protein)を取得した。Pic1は、既にオーロラキナーゼBと複合体を形成することが示されているINCENPのホモログである。一方、Brm1はC-末端にブロモドメインを有し、299アミノ酸残基からなる機能未解析の蛋白質であることがわかった。そこで、我々は、Brm1に注目し、機能解析を行った。まず、Brm1のArk1との相互作用に必須な領域を限定したところ、ブロモドメインを除いた領域でArk1と結合することがわかった。GFP(Green Fluorescent Protein)を融合したBrm1ま、細胞周期を通じて核のクロマチン領域に局在すること、ブロモドメインは、ヒストンH3またはH4のN末端と相互作用することから、Brm1とヒストンとの結合を調べた。予想通り、ヒストンH3及びH4のN-末端と相互作用することがわかり、すさに報告されているオーロラキナーゼBの機能と考え合わせると、Brm1はArk1によるヒストンH3のリン酸化の制御に関与する可能性が考えられた。そこで、我々は、試験管内においてArk1のヒストンH3に対するリン酸化能をBrm1が抑制するかを調べた。その結果、Brm1は、Ark1によるヒストンH3のSer10のリン酸化を抑制し、さらに非特異的な基質であるMBP(Myelin Basic Protein)に対するリン酸化は抑制しないことから、ヒストンH3特異的にリン酸化を抑制することが示唆された。また、Ark1の自己リン酸化もBrm1を加えることにより抑制されることが観察された。次にbrm1^+破壊株における細胞内のヒストンH3のリン酸化を調べた。その結果、野生型株と比較して、高度にヒストンH3のSer10がリン酸化されていることがわかった。さらにbrm1^+破壊株では、Ark1の過度にリン酸化されたバンドが検出された。これらの知見よりBrm1は、Ark1及びヒストンと相互作用し、ヒストンH3のリン酸化を抑制すること、またArk1のリン酸化状態を抑制することがわかった。 LSC(Lasor Scanning Cytometer)による解析や隔壁形成頻度の計測によbrm1^+破壊株では、野生型株と比較してM期進行の遅延が見られた。また、Myosin ATPaseの阻害剤で、細胞質分裂を阻害するBDM(2,3-Butanedione-2-Monoxime)に対して、brm1^+破壊株は感受性を示した。この事は、Brm1がヒストンH3のリン酸化以外の機能も有している可能性が示唆している。そこで、我々は、現在BDM感受性を多コピーで抑圧できる遺伝子のスクリーニングを行っている。 M期における染色体の凝縮には、ヒストンH3のリン酸化及びそれに引き続いて起こるコンデンシン複合体の染色体へのリクルートが必須であることが報告されている。我々は、Two-hybrid法によりArk1とコンデンシン複合体の因子であるCnd2との相互作用を見出した。現在、Ark1とコンデンシン複合体が相互作用する時期について検討している。また、コンデンシン複合体の温度感受性変異株とark1^+変異株もしくはbrm1^+破壊株を用いることにより遺伝的相互作用の有無も検討中である。 Brm1と相同性の高い蛋白質は、様々な生物種において存在しているが、現在のところ、それらは、すべて機能未解析の蛋白質である。オーロラキナーゼBは、酵母から高等動物まで広く保存されていることから、我々は、Brm1と同様な機能する因子も広く保存されていると考えている。そこで、ハエのオーロラキナーゼBであるIALと相互作用する因子のTwo-hybridスクリーニングを行う予定である。
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