Research Abstract |
傾斜畑地の土・水移動に対するビニ-ルマルチの影響について,各研究分担者は本年度の研究により下記の成果を得た。 1)今尾は,現有する4基の傾斜土槽(長さ:5.0m,幅:1.0m,傾斜度:8°)を用い,傾斜方向に畝立てした畝表面にビニ-ルマルチを敷設した畝,敷設しない畝,及び畝間に藁マルチを併設した場合について自然降雨を対象として土壌侵食量,及び降雨侵透量をそれぞれ測定した。その結果,ビニ-ルマルチを敷設した場合,畝間には藁マルチを併設する必要があること,さらに畝からの雨滴による土壌飛散現象が予想以上に土の移動に関与していることを検証した.これらの土移動に関する挙動は,人工降雨による室内実験により検討し,ともにビニ-ルマルチを敷設した農地に対する保全上の問題点を顕在化させながら,その保全手法について新たな知見を得ることができた,来年度にむけてさらに検討を加えたい。 2)木原・福桜は,試験圃場にテンションメ-タを埋設し(畝7本,畝間3本)、連絡的に土壌水方の観測を8月中旬から9月下旬まで行った。観測は,基本的には9時と18時の1日2回行ったが,灌水後にはより詳細な検証のため1日4回の観測を行い,同時にテンションメ-タと同じ深さの土を採取し,水方量を直接測定した。その結果,灌水量が少ない場合には灌水水方は表面から40cm以浅の有効土層内に留まるのに対し,灌水量が多い場合,灌水水方の大部分は下方に浸透し,下層からの水方補給は連続干天1週間以上で生じることが確かめられた。また圃場と同貭の土を供試土として,灌水量・灌水強度が土壌中への水方の浸潤に与える影響について室内実験を行った。その結果,灌水強度の違いによる差はほとんどなく,灌水量が多い程,灌水された水方が大きい速度で下方に移動している傾向がみられた。これより,圃場で一般に行われているような灌水では,灌水強度による影響は少く,灌水量のみが浸潤現象を支配するといえる。
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