1992 Fiscal Year Annual Research Report
老年痴呆脳と正常老化脳の免疫組織化学的研究-画像処理システムを用いた定量的解析
Project/Area Number |
03454240
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
葛原 茂樹 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (70111383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢谷 隆一 三重大学, 医学部, 教授 (80024636)
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Keywords | 脳の老化 / 痴呆 / アルツハイマー神経原線維変化 / 老人斑 / タウ蛋白 / β蛋白 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
現在、痴呆のない生理的老化脳161例(年齢50歳代〜100歳代)について、β蛋白で染色される老人斑(SP)とタウ蛋白で染色されるアルツハイマー神経原線維変化(NFT)について、主として顕微鏡的観察に基づいて、その傾向を検討した。その結果、明らかになったことは以下の如くである。(1)NFTは加齢に伴って海馬と海馬傍回に出現し、かつその数が増加した。しかし、それ以外の側頭葉皮質での出現は稀で、後頭側頭回、下側頭回など、側頭葉の下面に近い部分に限局して出現する程度であった。海馬と海馬傍回のNFTは、程度の差はあるもののほぼ全例に認められた。(2)SPは、その出現部位は一定せず、最も高頻度に出現するのは海馬傍回であったが、その他にも上・中・下の各側頭回にも認められた。側頭葉の中で最も出現しにくい部位の1つは海馬であった。また、SPの出現は加齢に伴って必ずしも増加せず、80歳代以上の例に限っても、約50%には、側頭葉内にSPを確認できない症例があった。 以上の結果から以下のことが考察される。まず、脳の生理的加齢を最もよく反映するのは海馬と海馬傍回のNFTである。SPは出現部位が一定しないこと、および高齢者群でも出現しない症例が、50%近くあることから、加齢の指標とすることはできないと思われる。NFTとSPの相関については、好発部位が異なること、出現の仕方が必ずしも対応していない例がかなりあることから、正常老化脳に限って言えば、アルツハイマー病で推定されているような、β蛋白の蓄積がタウ蛋白の代謝障害を誘発し、NFTが形成されるという図式は該当しないように思われる。今後の課題としては、顕微鏡的観察をどう画像解析で定量化していくことで、少数例を用いてプログラム作成を検討中であるが、かなり困難な点があり、実用化には解決すべき点が残っている。痴呆例については症例を蓄積しつつあり、非痴呆例との比較を実施する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 葛原 茂樹: "Cisaprideによるパーキンソニズムに抑うつ." 神経内科. 36(2). 217-218 (1992)
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[Publications] Hamaguchi Y, Kuzuhara S, Yamamura Y, Katsui Y: "Clinical and neuroradiological study on familial juvenile parkinsonism:report of three cases." Mie Med J. 42(2). 163-172 (1992)
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[Publications] 葛原 茂樹: "脳血管性痴呆;病型分類と診断." 現代医療. 24(6). 1803-1809 (1992)
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[Publications] 葛原 茂樹: "アミロイド沈着と痴呆との関連について." 老年精神医学雑誌. 3(7). 728-735 (1992)
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[Publications] 葛原 茂樹: "脳卒中と痴呆;アルツハイマー型痴呆との鑑別は?" 循環科学. 12(10). 958-962 (1992)
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[Publications] 葛原 茂樹: "悪性腫瘍と薬剤性神経障害." 治療. 75(2). 290-292 (1993)
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[Publications] 葛原 茂樹: "脳血管性痴呆の症状と経過(長谷川 和夫監修、清水 信編集:老年期痴呆の診断と治療)" 中央法規出版, 24 (1992)
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[Publications] Kuzuhara S, Yoshimura M: "Advances in Neurology vol.60 (ed by Narabayashi H, Nagatsu T, Yanagisawa N, Mizuno Y)" Raven Press, 5 (1993)