1991 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアの対日感情に関する研究ー日タイ両国の国際報道を手がかりとして
Project/Area Number |
03610086
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
柳井 道夫 成蹊大学, 文学部, 教授 (10054321)
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Keywords | タイ王国 / 対日感情 / タイの新聞 / アティチョン / サイアム・ラット / バンコク・ポスト(タイ英字紙) / ネイション(タイ英字紙) / タイ報道 |
Research Abstract |
1970年代のタイ新聞をみると、全体的に言って、日本に対するよりもアメリカに対する関心が強いことがわかる。英字紙も含めて、日本についての記亊よりもアメリカについての記亊が件数、スペ-スともにはるかに多い。大規模な日本製品不買運動のあった1972年や、田中首相の訪タイに反対する激しい反日デモのあった1974年においてもそうである。また1975年以降、日本はタイに対する最大の援助国となってからもそうである。 この時期の対日感情はかなりきびしいが、しかし一方では日本に対する関心が呼びさまされる時期でもあった。当時の学生運動のリ-ダ-の1人によれば、日本製品不買運動及び反日デモは、必ずしも反日感情そのものではなく、「反日」を運動に利用した側面が強かったという。 1980年代前半における日タイ交流の活発化、80年代後半の集中豪雨的な日本企業のタイ進出、それにともなう大量の日本人のタイ社会への出現によって、否応なしに日本に対する関心は高まり、タイの新聞においても80年代後半においては、日本に関する記亊が急速にふえている。しかしその底流には、日本企業の進出のしかたや、日本のODAのあり方について、潜在的な批判がくすぶっている。知識人たちの間にはかなりこうした批判があって、新聞の社説やコラムにこうした批判が現れてくる。一般的には日本との良好な関係を保とうとして、好意的な記亊の書き方や発言が多いのだが。 日本の新聞では、1970年代に比べれば、80年代、それも後半になるとタイについての記亊は多くなるが、タイの新聞の日本関連記亊に比べればきわめて少ないし、タイにおける対日批判などには、ほとんど全く無関心のように思われる。このことはタイばかりでなく、日本のアジアに対する姿勢一般に見られることなのだが。
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