1993 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア諸国連合(ASEAN)の協力体制と限界-1980年代の各国国内社会状況とASEAN政治-
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03620030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山影 進 東京大学, 教養学部, 教授 (10115959)
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Keywords | ASEAN / 東南アジア / 国際協力 / 地域経済連合 |
Research Abstract |
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、昨年ついに安全保障の分野でもイニシアチブを発揮し、ASEAN地域フォーラムの設立に成功した。また、懸案の自由貿易地帯化もようやく緒についた。さらにはアジア太平洋経済協力(APEC)の中の重要な核にもなりつつある。このようなASEANをめぐる現実世界の変化により、ASEANに対する関心はますます高まってきた。本研究課題である1980年代を中心とするASEANの分析は、90年代のASEANの積極外交を理解する上で不可欠の作業である。 本年度は最終年度であり、昨年度までに収集した資料の整理を中心に、分析作業を進めた。その結果、経済協力の80年代における停滞の解明はほぼ完成し、発表予定の論文にまとめられた。また、インドシナ問題に対するASEANの取り組みに関しては、ベトナムのカンボジア侵攻以前、ASEAN対インドシナという対立の構図は東南アジアの理解として不正確であることが明らかになった。80年代に入ってからのASEAN内部の対立に関しては、まだ解明すべき点が残っている。 今後の課題として、80年代末の国際秩序の変動がASEANに及ぼした政治的経済的影響の分析がある。この作業を進めることにより、今日のASEANの全体像が過不足なく描けるであろう。いずれにせよ、本研究により、従来十分に理解されてこなかった80年代のASEANの活動がかなりの程度明らかになり、一見停滞していたASEAN協力の裏で、加盟各国間の相互依存と相互協議の制度化が進展していたことが確かめられたことが大きな成果である。
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[Publications] 山影 進: "『地域』の語り口" 講座社会科学の方法(7)(岩波書店). 189-217 (1993)
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[Publications] 山影 進: "ASEAN経済協力の模索" 新国際秩序の構想(南窓社). 11-38 (1994)
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[Publications] 山影 進: "対立と共存の国際理論" 東京大学出版会, 361 (1994)