1991 Fiscal Year Annual Research Report
韓国中小企業の経営特質に関する研究ー特に儒教との関連ー
Project/Area Number |
03630074
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
池田 靖昭 浪速短期大学, 商業科, 教授
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Keywords | 儒教文化圈 / 儒教の幣害 / 血縁重視思考 / 排他主義 / 個人主義的思考 / 帰属意識 / 両班志向 / 情報の共有 |
Research Abstract |
日本、アジアNIESをみると、儒教文化圈における各国の経済発展には目を見張るものがある。儒教文化圈のなかで韓国は李朝500年の間、宋学=朱子学だけを唯一に正学として固守し、その教義に関する限り「述べて作らず、信じて古えを好む」を鉄則としてきた国といわれる。その儒教の論理が、次のような社会的・文化的環境を醸成し、その結果、韓国中小企業の経営特質を形成、発展させたと考える。1.血縁重視思考、血縁重視思考は血縁集団に対しては強い忠誠帰属意識をもつことになるが、他方自分と関係のない他人、他集団については無関心になるがちである。韓国の大企業はもちろんのこと、中小企業においても排他主義や派閥主義が認められる。人的資源において労働意欲も高く、しかも教育制度は先進国以上であるにも拘らず企業間の移動が頻繁であり、労働力を内部化することが弱く、企業特有の技術・技能の進歩を阻む原因となり経営基盤の脆弱な経営体質になっている。2.個人主義的思考 儒教論理によって集団意識とか国家意識とかは発達しにくく、それゆえ血縁を中心とした親族、家族を中心した集団に帰属意識をもち、自分の生活を守ろうとする個人主義思考が発達した。この思考が、企業内部に技術・経営ノウハウを蓄積することを困難にし、しかも社内教育訓練も未整備にしている。3.両班志向 個人の能力を最大限に発揮し、また立身出世欲を強くもち、あらゆる競争に勝ちぬいていくという韓国人の理想は、一日中身体を動かすことなく書を読み人の話を聞くという両班生活にあるといえる。企業家精神は旺盛だが、持続、継続性に課題があり、情報の共有が容易でなく現場の知恵が生かされにくい経営特質を形式している。1980年代後半から積極的に取り組まれた中小企業育成政策で系列化度も高まりつつあり、韓国中小企業の経営的成長はこれから本格化するであろう。
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