1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640346
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
畠中 洋志 金沢大学, 教育学部, 教授 (30111751)
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Keywords | 核磁気共鳴 / NMR / 回転系断熱消磁 / ADRF / 高周波電場励起 |
Research Abstract |
電気四重極相互作用をする核スピン系の高周波電場励起では、理論上、基礎的NMR現象と類似の現象が期待されるが、非常に低い励起効率のため、その実現は非常に難しい。本研究では、数年前の高周波電場による熱混合の研究から予想された、回転系断熱消磁(ADRF)の類似現象の実現を、Al_2O_3中のAl核スピンを用いて試みた。実験の結果、ADRFの特徴を示す結果を得たが、予想外にその可逆性が悪く、そのため、直ちに高周波電場によるADRFが可能であるとは断定できなかった。可逆性が悪い原因としては、(1)高周波電場の印加中に断熱条件が破られていること、(2)ゼ-マン相互作用系と磁気双極子相互作用系との間の熱混合が不十分であること、が考えられ。(1)については、rfパワ-アンプ(科研費で購入)を用いて調べた結果、その可能性は無視し得る程であることがわかった。(2)の可能性を調べるには、高周波電場をかなり長時間印加するか、または、更に強力な電場を印加する必要があるが、これは試料の破損をまねくため、実行できなかった。そのため、熱混合理論に基づいて、実験的に得られた断熱過程を正確に記述する方法を考察し、これにより、実験上の制約を越えた条件でのADRFの様子を調べた。その結果、断熱過程の初期に大きな非可逆性が生じることが判明した。しかし、その後の過程はほぼ可逆的であり、この結果から、高周波電場による回転系断熱消磁が原理的に可能であるという結論を得た。現在、この大きな非可逆性の発生機構を、スピン熱力学的考察も加えて追究しているが、明らかになりつつある。
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