1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 健一 東京大学, 理学部, 助教授 (30150056)
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Keywords | 手話 / 聾 / 劣性遺伝 / 同類結婚 |
Research Abstract |
手話が聾者の自然言語であるという認識が、欧米では1960年代から持たれるようになった。一方、重度の幼児期失聴の多くが遺伝性であり、複数の劣性遺伝子(日本では約5つ、北アイルランドでは30強と推定されている)が関与していることが知られている。遺伝子と文化の相互作用の観点から興味深いことは、劣性遺伝の特徴として聾者が世代を隔てて出現する傾向にあるため、親から子への手話の伝達(垂直伝達)が祖害されるところにある。複数の劣性遺伝子の効果が見られるもっとも簡単な場合として、連鎖のない二遺伝子座のモデルを仮定して、手話存続の条件を研究した。一遺伝子座のモデルと同様に、聾者同士の同類結婚率に比例して垂直伝達の重要性が増大する。だが、聾の原因となる劣性遺伝子座が一つから二つに増えることにより、垂直伝達の効果がほぼ半減することが分かった。次に、聾学校などにおける血緑関係にない聾児の出会いをモデルに取り入れた。その結果、聾児間の同類の出会いや反復的な相互作用があれば、水平伝達の効果も大きいことが分かった。さらに、聾学校の教師が手話を流暢に使えれば、教師から学童への斜行伝達も可能であり、理論的には手話の維持に貢献しうる。しかし、歴史的な事実として聾学校における手話使用は奨励されなかったため、斜行伝達の寄与は小さかったものと思われる。上記研究は、スタンフォード大学のマーカス・フェルドマン教授とに共同研究であり、現在投稿中である。
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Research Products
(1 results)