1993 Fiscal Year Annual Research Report
寄生蜂の寄主探索行動を支配する内的・外的要因の解析
Project/Area Number |
03660043
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
福井 昌夫 京都大学, 農学部, 助手 (00150326)
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Keywords | 寄生蜂 / 寄主探索行動 / ミカンハモグリガ / ヒメコバチ / Sympiesis striatipes / Cirrospilus sp / 記憶 / 学習 |
Research Abstract |
ミカンの新葉の柔組織に潜孔(mine)を作り食害するミカンハモグリガ幼虫には,数種の寄生バチが寄生する.京都ではヒメコバチ科のSympiesis striatipesとCirrospilus sp.の2種が優先種である.これらのハチは寄生するまでに,寄主の棲息場所と寄主の確認,産卵のなどの段階を追って探索範囲を限定して行く.寄主の生息場所の発見には,ミカン葉の匂への定位と,潜孔中にいる寄主を捜し当てるまでの潜孔上での探索行動とが,重要な要因として働いている.本年度は,以上の実績をもとに,一度寄生経験を持ったハチが別の寄主に寄生する場合に,産卵経験が寄主探索の重要な因子の一つであるミカン葉の匂いと関連を持つか否かを室内実験で明らかにした.実験には発生数の多いS.striatipesを用いた. ガの幼虫の寄生を受けたミカンの新葉をハチに与え,寄生させた後,1,3,7日目のこのハチの平面型風洞でのミカン葉の匂いに対する風上定位歩行を録画した.これを再録してハチの(1)平均歩行速度(2)転回角の絶対値(3)録画開始から終了時までの直線移動距離と実質移動距離との比の3つのパラメータを求め,匂いに対する反応の違いを解析した.対照には産卵未経験のハチを用いた.結果は次のように要約できた.一度産卵を行ったハチは,未経験のハチに比べ,定位の平均歩行速度は速く,転回角の絶対値な小さく,そして直線移動距離と実質移動距離の比は1に近く,直線的に匂い源に到達した.産卵経験のあるハチと未経験のハチの定位行動のパラメータに7日目には有意差が見られなくなった.以上の結果は,産卵経験のあるハチは,最初の産卵の際に寄主の生息場所の情報であるミカン葉の匂いを記憶し,これ以降約1週間匂いを手掛かりに容易に産卵場所を発見することが分かった.すなわちハチの内的要因の変化-産卵経験-が寄主探索行動-寄主植物への定位-に影響を与えることが明らかとなった.
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