1992 Fiscal Year Annual Research Report
分類不能型免疫不全症B細胞における遺伝子レベルでの病態解析
Project/Area Number |
03670324
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐伯 修 愛媛大学, 医学部, 助教授 (40162177)
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Keywords | 免疫不全 / B細胞分化 / 黄色ブドウ球菌 / 抗体産生 |
Research Abstract |
1.非常に希な免疫不全症の一つであるブルーム症侯群患者末梢血より異常を有するB細胞株が樹立出来た。本症はDNAリガーゼIの異常によるとされ,遺伝子レベルでの解析も可能になった。 2.一般に黄色葡萄球菌COWAN‐T株(SAC)はB細胞に分裂を伴う抗体産生を誘導することが知られている。昨年私達は黄色葡萄球菌WOOD株(SAW)がB細胞の分裂に影響を与えないで抗体産生細胞への分化を誘導することを報告したが,最近その細胞内活性化のメカニズムを解析するうえで有用なB細胞株を見いだした。このB細胞株はSAW,SAC刺激により分裂を止め,IgM産生細胞に分化する。この時,細胞増殖に関係するとされている癌遺伝子fosとmycの発現がSAC刺激で認められたが,SAW刺激では認められなかった。しかしながら両者ともタイロシンの燐酸化やfynの発現は認められなかった。その他JUN,JUNB,EGR‐1,TISII,REL,H‐RAS,K‐RAS,の発現はいずれに刺激に於いても誘導されなかった。SACとSAWは同じ黄色葡萄球菌に属し,細胞表面にPROTEIN‐Aの有無により大きく区別されている。また抗IgM抗体はヒトB細胞に分裂を誘導するが抗体産生は誘導しないことも知られているが,PROTEIN‐Aや抗IgM抗体は,FOSやMYCの発現を誘導することも明らかになった。以上の事はSACやIgM抗体は細胞表面のIgMを介して,FOSやMYCを活性化しB細胞に分裂を誘導するが,これらの刺激は直接抗体産生誘導には関与しないことが示唆された。抗体産生にはタイロシンの燐酸化に関するFYN等SRCファミリーの活性化が関係することが示唆され,またSAW刺激によりIgMmRNAの増加することも明らかになったが,両者の相関については今後更に検討が必要であると思われる。
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