1992 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌特異糖鎮構造の解析-その臨床応用をめざして-
Project/Area Number |
03670639
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥野 匡宥 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (10047144)
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Keywords | 大腸癌 / 糖脂質抗原 / 二次元薄層クロマトグラフィー / マススペクトロメトリー / TLC immunostaining |
Research Abstract |
手術によって摘出されるヒト大腸癌組織と非癌部大腸粘膜組織から中性および酸性糖脂質を抽出し、2次元薄層クロマトグラフィーにて展開、分離し、両者の糖脂質組成の差異を比較検討した。遠位大腸癌において、非癌部大腸粘膜組織にはほとんど存在せず、癌組織にのみ顕著に発現のみられる中性糖脂質を見いだした。この糖脂質を分離、精製し、その糖鎖構造の分析のため、alditol acetate誘導体としてGas Chromatography分析を行い、またintactな糖脂質はFast Atom Bombardment Mass Spectrometry(FAB/MS)分析を行った。さらに各種のモノクローナル抗体を用いてTLC-immunostainingを行い、免疫学的検討を加えた。その結果、遠位大腸癌組織にのみ顕著に発現のみられるこの中性糖脂質の構造は、以下のごとく明らかになった。糖鎖組成はFucose、Galactose、Glucose、N-Acethylglucosamineの4糖からなり、モル比がそれぞれ2:2:1:1であった。negative ionmodeでのFAB/MS分析において、[N-H]^-イオンが、m/z1647,1663に検出され、次にFucoseの脱離によるフラグメントイオンが、m/z1501,1517に検出され、さらに順次糖が脱離したフラグメントイオンが、[CDH-H]^-(990,1006)、[CMH-H]^-(828,844)、[Cer-H]^-(666,682)であることから、糖鎖構造は、Fuc-Gal-FucGlcNAc-Gal-Glc-Cerであると示唆され、さらにTLC-immunostainingでは、抗Le^Y抗体と反応せず、抗Le^b抗体と反応したことから、遠位大腸癌組織にのみ顕著に発現のみられるこの中性糖脂質は、Lewis b血液型抗原またはその近似糖脂質であることが判明した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 曽我部 豊志,奥野 匡宥,〓 容錫,矢野 郁也,堀田 久子,曽和 融生: "ヒト大腸癌と糖脂質抗原" 消化器癌の発生と進展. 4. 331-334 (1992)
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[Publications] 曽我部 豊志,〓 容錫,奥野 匡宥,梅山 馨,曽和 融生,堀田 久子,矢野 郁也: "ヒト大腸癌組織における糖脂質抗原の発現とその変動" 脂質生化学研究. 33. 163-166 (1991)
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[Publications] 曽我部 豊志,〓 容錫,奥野 匡宥,曽和 融生,堀田 久子,矢野 郁也: "ヒト大腸癌組織におけるLe^b血液型糖鎖脂質抗原の発現とその性状" 腫瘍マーカー研究会誌(1991). 265-266 (1991)