1993 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌特異糖鎖構造の解析-その臨床応用をめざして-
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03670639
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
奥野 匡宥 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (10047144)
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Keywords | ヒト大腸癌 / 糖脂質抗原 / Le^b血液型抗原 / 二次元薄層クロマトグラフィー / マススペクトロメトリー / ヒト大腸癌細胞株OCUC-M,OCUC-F |
Research Abstract |
ヒト大腸において、癌化による糖鎖構造の変化を検討するために、ヒト大腸癌組織および対照として同一症例の非癌部大腸粘膜組織から、直接糖脂質抗原を単離し、両者を比較検討した。そこで大腸における癌化による糖鎖抗原(糖脂質)の変動を明らかにし、遠位大腸癌組織において癌関連抗原を見いだした。今回検討した遠位大腸癌症例の全例において、非癌部正常大腸粘膜組織には殆ど現れず、癌組織にのみ顕著に発現の見られる糖脂質抗原が認められ、mass spectrometryをはじめとする生化学的分析法や、モノクローナル抗体を用いた免疫学的手法を用いて、その構造を分析し、Fuc-Gal-(Fuc)GlcNAc-Gal-Gle-CerであるLewis b血液型抗原であり、セラミド組成は、2-hydroxy C24の長鎖脂肪酸と、主要長鎖塩基としてC18のフィトスフィンゴシンであると同定した。この抗原は、遠位大腸癌に特徴的に発現する糖脂質抗原と考えられた。また、遠位大腸癌組織における中性糖脂質組成では、非癌部正常大腸粘膜組織と比較して、CDHの増加と、CMHの減少が認められ、癌組織において糖脂質糖鎖の合成不全が認められた。さらに、ヒト大腸癌細胞の生物学的性状を知るために、大腸癌患者の胸水より単層(OCUC-M)および浮遊性増殖(OCUC-F)を示す2クローンを樹立し、培養細胞の性状を比較検討した。培養上清中の糖鎖性腫瘍マーカーはいずれも高値を示し、さらにヌードマウスの皮下移植により形成した腫瘍から抽出した糖脂質において、両細胞の糖脂質抗原組成を比較検討した結果、シアル酸を有するガングリオシド組成に顕著な差異がみられた。単一癌組織より性質の異なる2種のクローンが得られ、本細胞株は、癌細胞の発育、増殖ならびに癌のheterogeneityの基礎的検討に役立つと考えられる。また、ヌードマウスの大腸へ移植することも可能で、大腸癌のin vivoモデルとしても有用と考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 曽我部豊志,奥野匡宥,鄭容錫,宇野郁也,堀田久子,曽和融生: "ヒト大腸癌と糖脂質抗原" 消化器癌の発生と進展. 4. 331-334 (1992)
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[Publications] 曽我部豊志,鄭容錫,奥野匡宥,梅山馨,曽和融生,堀田久子,宇野郁也: "ヒト大腸癌組織における糖脂質抗原の発現とその変動" 脂質生化学研究. 33. 163-166 (1991)
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[Publications] 曽我部豊志,鄭容錫,奥野匡宥,堀田久子,宇野郁也,曽和融生: "ヒト大腸癌組織におけるLe^b血液型糖脂質抗原の発現とその性状" 腫瘍マーカー研究会誌(1991). 11. 265-266 (1991)