1992 Fiscal Year Annual Research Report
高圧の生物活性タンパク質,微生物,培養細胞へ及ぼす影響及び医薬分野での高圧の利用
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03671069
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Research Institution | Institute of Medicinal Chemistry, Hoshi University |
Principal Investigator |
高橋 朋子 星薬科大学, 医薬品化学研究所, 教授 (50061271)
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Keywords | 加圧変性 / 加熱変性 / 生澱粉 / グルコアミラーゼ / ヒアルロニダーゼ / メタロプロティナーゼ |
Research Abstract |
生澱粉に1000〜6000気圧の静水圧をかけ加圧変性の様子を加熱変性と比較しつつ走査電子顕微鏡(SEM)および示差走査熱分析(DSC)により追跡した。その結果、生澱粉は1000〜3000気圧処理では変化がみられなかったが、4000気圧以上の加圧でSEM像が変化し、DSCにおける吸熱ピーク温度も77.5℃から94.1℃へと移動しピーク面積も小さくブロードになった。加熱変性は65℃以上の加熱でみられたが、SEM像は加圧変性と加熱変性とでは明らかに異なり、両変性の機序に若干の差異のあることが判明した。 次に各酵素に対する高圧の影響を検討した。(1)グルコアミラーゼに対する影響:Rhizopus属菌の産生する3種のグルコアミラーゼのうち、主成分で生澱粉分解能の高いGluc_1を選んでpH5.0,0.1M酢酸緩衝液中(0.5mg/ml)、室温で5000気圧の加圧処理をした。Gluc_1は1時間の加圧後も可溶性澱粉、生澱粉、マルトース、ρ‐ニトロフェニル‐α‐D‐グルコピラノシドのいずれの基質に対しても約90%の残存活性を示した。加圧時の温度を45℃まで高めても失活度は変わらず、変性剤である2M塩酸グアニジンの共存下での加圧ではじめてほぼ完全に失活し、可成りの耐圧性を示した。(2)ヒアルロニダーゼに対する影響:ウシ睾丸ヒアルロニダーゼをpH7.2、0.01MPBS中(0.1mg/ml)、室温で30分間加圧すると、3000気圧までは失活しなかったが3500気圧処理から失活しはじめ5000気圧以上で殆ど完全に失活した。(3)プロテイナーゼに対する影響:ハブ毒由来の非出血性メタロプロテイナーゼであるH_2-プロテイナーゼをpH8.5、0.05Mborax‐HCI緩衝液中(0.6mg/ml)、室温で1時間加圧すると、3000気圧処理でも約90%の活性を失い最も圧耐性の弱い部類の酵素であった。SDS‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動やフルオレスカミンによりアミノ基の定量結果から、H_2-プロテイナーゼは加圧変性過程で自らのプロテイナーゼ作用によるペプチド結合の切断を伴っていることが判明した。
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