1991 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮資料による中国近世語史研究の可能性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
03801038
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 秀明 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 講師 (60168995)
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Keywords | 中国近世語 / 朝鮮資料 / 評世評話 |
Research Abstract |
本研究の目的は,現代中国語の形成に大きな役割を果たした近世語の研究方法の一つとして,中国の白話文学に見られる文学言語を資料とするのではなく,朝鮮に残る資料を基礎にする研究が考えられること,そしてこの研究方法を用いることで従来の研究では読み取りが難しかった中国近世語史の一面を明らかにしようとすることにある。 平成3年度は名古屋蓬左文庫所蔵の『訓世評話』を中心に中国近世語の観点から語彙・語法の研究を進めた。本書に注目した理由は,成書時期が明らかであり,文言と白話が対応しているという二点であったが,本年度の研究を通してこの二点の重要性が一層明らかになった。成書時期については1473年(成宗4),蓬左文庫所蔵本は1518年(中宗13)の版であることはすでに報告されているが,この年代を念頭に置き『訓世評話』の表記法,とくに異体字の調査より,これまで成書時期の特定が難しかった言語資料の整理に有効であることが分かった。また文言と白話が対応の点では,太田辰夫氏による論考が『中国語研究』第33号に発表され,語句の解釈や解説は本研究にとって大いに参考になった。本年度の研究では基本的な語彙の整理がほぼ終了し,索引の編纂作業に着手している。以上の二点のほかに『訓世評話』の出典については部分的であるが『為善陰隲』(内閣文庫蔵)などいくつかの先行文献を探すことができたことも本年度の研究の成果と考えられる。 また我が国において朝鮮資料を用いて中国語の研究を進めた先達から直接お話しを伺う計画も太田辰夫、陶山信男、山川英彦の三先生を始めとする諸氏のご協力で遂行でき,戦後から近年にいたる研究の概観と今後の研究展望について意見の交換ができたことは本年度のもうひとつの成果であると考えている。
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