1992 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀のドイツ語圏における、演劇作品に表現された歴史意識についての考察
Project/Area Number |
03801043
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
生田 眞人 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50140067)
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Keywords | 歴史意識 / 啓蒙(主義) / 哲学的省察 / 思考の自律性 / フランス大革命 / 解体・再構築 / 歴史主義 / 歴史の持統一断絶 |
Research Abstract |
ヘーゲルの理解によれば、ドイツの哲学的思惟は啓蒙精神の代表とされるカントに至って始めて思考の自律性をかち得た。ヨーロッパにおいてのフランス大革命とその帰結は、ドイツでは啓蒙の精神にのっとった「哲学的省察」に付されて、革命の意味そのものが問われる事になる(カントの啓蒙とは何か?」、「大学の学部論争」参照)その結果、思考は単に「経験」によってのみ自己を表現していくという従来の形而上学的束縛を脱する。もっとも、この啓蒙の精神による思考の自律化が徹底して完遂され得なかったことから、19世紀及び20世紀におけるドイツの歴史的迷誤、が生まれたといえる。言葉をかえていえば、啓蒙の精神そのものが、もともと二面性をもち、それ故第二次大戦までのドイツの過去の歴史は再検討される必要があった。(アドルノー/ホルクハイマーの「啓蒙の弁証法」、及びハーバーマスのコミニュニケーション理論など参照の事)。 このドイツの歴史及び哲学思想の流れに19世紀のドイツ演劇が提出した問題を関連づければ、従来、否定の精神より出立した演劇、或いは未完結の演劇を構成したのみとされるビュヒナー及びグラッベの歴史劇が意外にもドイツの歴史の実相に肉薄し、ドイツの歴史の再検討につながる歴史意識を作品内に提示した。この論証に加え、今年度の研究では次の二項目につき集中的に検証を加えた:1)グッツコウ及びラウベが歴史劇及び歴史小説(社会小説)で行なった19世紀後期の「社会診断」2)ヘベル及びワーグナーが歴史・神話との対峙による導びき出した「歴史意識」もしくは広く彼らの「歴史観」。
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Research Products
(1 results)