1991 Fiscal Year Annual Research Report
分子間相互作用の強度と不規則性を主要素とする合成反応の分類と制御
Project/Area Number |
03805076
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 泰彦 大阪大学, 工学部, 助教授 (40029070)
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Keywords | 分子間相互作用 / 溶質ー溶媒間相互作用 / 弱酸の解離 / 分子熱力学 / 求核置換反応 / 混合溶媒 |
Research Abstract |
溶液反応に於ける分子間相互作用の意義を検討する場合、少なくとも二つの型の相互作用を考慮しなければならない。その一つは溶媒分子間の相互作用であり、他は溶質ー溶媒間の相互作用である。そして、前者の効果が最も顕著に溶液物性の上に反映される系が水溶液系であり、後者が最も特徴的な効果をもたらす系がプロトン性溶媒中の求核置換反応である。 水溶液中の弱酸の解離反応は化学のれい明期以来、その基本概念を形成する上に重要な役割を演じ続けて来たが、現在なお説明不可能な問題が幾つかある。その一つが置換基効果の“エントロピ-支配"のパラドックスである。本研究では弱酸の共役塩基をふくむ第四アンモニウム塩の溶解熱をアセトニトリルーメタノ-ル混合溶媒中で測定し、これをその構成成分(物理的相互作用と特異的相互作用)に分割した。そして、特異的相互作用エンタルピ-と弱酸の解離の自由エネルギ-との間には“反応系に依存した相関々係"が存在することを見い出し、さらに解離のエントロピ-との間には“反応系に独立な普遍的な相関関係"が存在することを明らかにした。これらの事実を基礎として、水容液中の弱酸の解離について、分子間相互作用の不規則性(エントロピ-)とその強度(エンタルピ-)を主要因とする分子熱力学的機構を確立した。 プロトン性溶媒中に於ける求核置換反応の制御の目的で弱酸の共役塩基を求核種とする置換反応の速度と活性化パラメ-タ-をアセトニトリルーメタノ-ル混合溶媒中で測定した。上述の共役塩基の解析結果と組み合わせることにより、反応の進行に伴う溶質ー溶媒相互作用の変化を定量化した。さらに、経験的分子軌道法を用いることにより分子間相互作用を分子論の立場から検討し、求核置換反応をモデルとして反応速度を予測する方法を開拓した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 近藤 泰彦: "弱酸の共役塩基の移行エンタルピ-,水溶液中,弱酸の解離の分子熱力学" 王立化学会誌.
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[Publications] 近藤 泰彦: "イミドイオンを求核種とする置換反応,溶質ー溶媒相互作用の熱力学と反応速度" 王立化学会誌.