Research Abstract |
Fーアクチンの脱重合物質としての血中ゲルゾリンの定量法を検討した.もっとも敏感な方法としてウサギ骨格筋のFーアクチンに血清の10倍希釈液を適当量加えて,脱重合して生じるGーアクチンがDNasel活性を阻害する程度からゲルゾリンを定量する間接法の測定条件を徹底的に検討した結果は,1.アクチンを頻繁に調整することは煩雑であるので,活性を維持したまま保管することを考え成功した.アクチンは溶液のまま保存すると,たとえ冷室内でも,1週間ほどで失活したり,腐敗する.しかし,KCl,MgCl_2,CaCl_2,DTT,ATP,NaN_3,MOPS(pH7.5)を含む溶液中で,Fーアクチンにして,その沈殿を密栓して,氷につけておくと,活性を保ったまま少なくとも3月から半年は使用可能である.この間,用に臨んで,適当量とり,Fーアクチンとして,透析して使用する.2.Fーアクチン溶液の一部をとり反応溶液を調整したとき,Fーアクチンが希釈されて一部Gーアクチンとなり,新しくFーアクチン【double arrow】Gーアクチンの平衡が25℃では,30ー40分で成立し,その後2時間程度安定であるので,この間に測定せねばならない.従来の測定で誤差の多かった主要な原因がここにあることにきずいた.3.ゲルゾリンの作用はCa^<2+>に依存するので,血液内のCa^<2+>の濃度変動に依存しないように,逆に反応液のCa^<2+>の濃度を高めることで克服することが出来た.4.一方,このような測定法の検討と平行して,ゲルゾリン研究の近い将来に備えて,乳癌組織にはゲルゾリンが検出されないという報告がある(Am.J.Pathol,134,597ー603(1989))ことにきずき,ゲルゾリンの消長が癌細胞の一般的性質が否か,さらに癌発生段階と関連性をもつものかどうかを追求することを考えて,成人T細胞白血病(我が国で発見され,よく研究されているATL)の実験モデルの作成という基礎的研究も開始した.
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