1991 Fiscal Year Annual Research Report
異種遺伝子系間のcrossーtalk様式の分子機構
Project/Area Number |
03808021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 寛 名古屋大学, 医学部, 講師 (40126868)
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Keywords | ミトコンドリア / 核 / 遺伝子発現 / 協調発現 / 転写調節因子 / DNA結合蛋白質 / Dール-プ / プロモ-タ- |
Research Abstract |
ミトコンドリア(mt)内膜における呼吸鎖複合体の構築には核とmtという物理的に隔離された異なる遺伝子系に由来する数百の遺伝子の協調発現が、またmt遺伝子発現には多数の核遺伝子産物の関与が不可欠である。 1.両遺伝子系の転写レベルでの協調発現に係わる蛋白質因子(Mt因子)を同定し、その高等動物細胞における普遍性と細胞内局在性を明らかにした。 (1)ヒトmtゲノムの主たる非翻訳領域内にあり、複製に係わるDール-プ領域と転写に係わるプロモ-タ-領域にそれぞれ高度に保存されたMt配列を見いだし、ゲル移動度シフト法による分析により、核・mt両遺伝子のMt配列に特異的に結合する同一もしくは類似のMt因子がHeLa細胞に存在することを明らかにした(i)。(2)Mt因子の機能と構造を解明するため、ヒト及びラット肝臓より調製した核とミトコンドリアからのヘパリンーセファロ-スとMt配列を含む合成オリゴヌクレオチドをリガンドとするDNAーアフィニティ-クロマトグラフィ-による精製法を確立した。(3)本因子はヒト及びラットの核とmtに存在することを明かにした。またヒトmtより精製した標品は4種類の蛋白質(分子量:120,100,70,52kDa)が含まれていた。(4)ヒトmtゲノムにコ-ドされている16SrRNA遺伝子内に種間で高度に保存された新たなMt配列を見いだし、これにも本因子が特異的に結合することも明らかにした。 2.Dール-プ領域内の複製開始と終結点付近に種間種内で保存された領域を5肱所見いだし(ii)、こられに特異的に結合する物理的性質の異なる蛋白質がヒトとラットのmtに存在することを明らかにした。 Mt因子の高等動物における普遍性と細胞内局在性は本因子が核遺伝子間のみならず両遺伝子系間の転写レベルでの協調発現に深く係わっていることを示しており、申請者が明らかにしようとしている核・mt遺伝子系間の協調発現機構が作動していることを強く示唆している(iii)。Mt因子並びにDール-プ領域結合蛋白質の構造と報能の遺伝子レベルでの解析は核遺伝子間の協調発現機構、核とミトコンドリア遺伝子協調発現機構並びにミトコンドリア遺伝子の発現機構を解明するものと期待できる。またこれらの因子の核遺伝子の解析によりmt呼吸鎖複合体の構築を制御する遺伝子(マスタ-遺伝子)を捕えることが可能となる。 (i)Suzuki,H.et al,J.Biol.Chem.,266:2333,1991 (ii)Ohno,K.et al.Biochem.Int.,24:263,1991 (iii)鈴木 寛、生化学 63:1335,1991
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hiroshi Suzuki: "Existence of common homologous elements in the transcriptional regulatory regions of human nuclear genes and mitochondrial gene" J.Biol.Chem.266. 2333-2338 (1991)
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[Publications] Kinji Ohno: "Identification of a possible element,Mt5,in the major noncoding region of mitochondrial DNA by intraspecific nucleotide conservation" Biochem.Int.24. 263-272 (1991)
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[Publications] 鈴木 寛: "ミトコンドリア形成における核・ミトコンドリア両遺伝子系間の協調発現機構" 生化学. 63. 1335-1339 (1991)
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[Publications] 鈴木 寛(分担執筆): "新生化学実験講座第5巻生体酸化・薬物代謝一核DNAと電子伝達" 東京化学同人, (1992)