2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03F00091
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
小川 昭弥 奈良女子大学, 理学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
季 志芳(Li Zhi?Fang) 奈良女子大学, 理学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 希土類複合系 / ポリシラン / クロロシラン / 還元的縮合 / 希土類光還元系 / 光誘起電子移動 / ヨウ化サマリウム / ジシラン |
Research Abstract |
本研究では、未開拓領域であるf軌道遷移金属錯体の光励起反応について基礎的な研究を独創的に押し進め、光励起希土類錯体の反応特性を解明するとともに、基底状態の希土類錯体では困難であったSi-Cl結合の高効率還元を連成した。その成果は以下のようにまとめられる。(1)2価のヨウ化サマリウムまたは0価の金属サマリウムは、ケイ素-塩素単結合を還元することができないのに対して、両試薬の複合系を用いれば、還元が効率良く進行することを見い出し、低原子価希土類の特異な複合効果を明らかにした。(2)さらにこの複合反応系が濃青色を有することに着目し、この溶液に可視光を照射することにより還元能が著しく向上し、クロロシランの還元的二量化が短時間かつ高収率で進行することを見い出した。(3)サマリウム複合系と光照射系をジクロロシランの還元に応用し、高純度のポリシランの合成に成功した。 以上の成果は、希土類元素の未知なる複合特性と光反応特性をはじめて明らかにしたものでる。さらに、合成したポリシランの分子量と紫外-可視スペクトルを測定したところ、従来法の場合に比べて、高純度でかつ分子量分布の幅がたいへん狭いという当初はまったく予想もしていなかった新事実を発見した。これは希土類新反応系の適度な還元能が還元縮合の反応経路を均一なものとし、さらに低原子価希土類の高い酸素親和性が系中に微量に混入する酸素や水を選択的に捕捉するため、Si-O-Si結合の生成を抑制した結果と考えられる。このような特徴を有する還元系は従来にはなく、この特徴を活かすことにより、従来法では困難であった多官能性ポリシランや複合ポリシランの高純度合成が可能となるだけではなく、シリレンやシラベンゼンなどの不安定なケイ素化合物の合成に広く応用可能と期待される。
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[Publications] Akiya Ogawa: "Photoinduced New Reduction System of Samarium Diiodide : Reduction of Organic Halides and Chalcogenides, and its Application to Carbonylation with Carbon Monoxide."Tetrahedron. 59・52. 10499-10508 (2003)
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[Publications] 小川昭弥, 李志芳: "低原子価希土類新反応系の開発"希土類. 45. 65-72 (2003)
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[Publications] Akiya Ogawa: "Low-Valent Rare Earth Reagents : Recent Progress"有機合成化学協会誌. 61・3. 201-210 (2003)
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[Publications] 小川昭弥: "セリウム試薬を用いる有機合成反応"Materials Integration. 16・2. 37-41 (2003)