2003 Fiscal Year Annual Research Report
高分子ゲルの表面における魔擦機構の究明と表面制御による生体適合性超低摩擦材料の創製
Project/Area Number |
03F00093
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長田 義仁 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NA Yang?Ho 北海道大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 高分子ゲル / ダブルネットワークゲル / 力学強度 / 動的光散乱 / 分子ダイナミックス |
Research Abstract |
高分子ゲルは、その優れた特性を生かし素材として用いようとした時、一部のゲルを除くとそのほとんどが脆く、結果的に限られた用途にしか利用できない。我々は非常に高い機械的強度を持つダブルネットワークゲル(以下DNゲル)について報告した。とりわけ、硬くて脆い強電解質性のポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)ゲル(以下PAMPSゲル)とやわらかい中性のポリアクリルアミドゲル(以下PAAmゲル)を絡み合わせたDNゲルの場合、90%以上の含水率を有しているにも関わらず、生体関節軟骨が日常的に受ける圧力(3-18Mpa)にも耐える強度を誇る。私は光散乱を用いてゲル中の高分子ダイナミックスを調べ、DNゲルの高強度メカニズムについて考察する研究を行った。そのため、以下のような結果が得られた。1)PAAmの2ndネットワークの架橋度が0-0.05mol%のときに破断応力は最大値を示し、架橋度が増加するに従いゲルは脆くなる。この結果は2ndネットワークの架橋を極めて緩く施すことが高い力学強度を得るために重要であることを示す。2)動的光散乱測定から、2nd架橋濃度が0-0.2mol%の場合に協同拡散モードとPAAmの遅い分子運動モードとの二つのピークが観察されるが、2nd架橋濃度が0.2mol%以上の場合には協同拡散モードだけのピークが存在することがわかった。力学物性測定の結果と比較するとDNゲルは遅い運動モードが観察されるときに力学強度が大きい。DNゲル中の遅い運動モードはPAAmの高分子鎖の並進運動によるものであり、この運動が破断エネルギーの散逸に深く関与していることが示唆される。ゲル中の高分子ダイナミックスから得られる知見は、高強度ゲルのより詳細な分子設計に役立つ。さらには、ソフトマター破壊メカニズムの理解にもつながることが期待される。
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