2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜のキュービック相の構造・安定性・相転移の研究とそのバイオテクノロジーへの応用
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03F00099
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山崎 昌一 静岡大学, 理学部, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AWAD Tarek Samir 静岡大学, 理学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 生体膜のキュービック相 / キュービック相-Lα相 間の相転移 / ペプチド-脂質膜相互作用 / キュービック相間の相転移 / 生体膜の静電相互作用 / モノオレイン / Q^<224>相 / Q^<229>相 |
Research Abstract |
我々は、正電荷を持ち、かつ電気的に中性の脂質膜の界面と相互作用するペプチドとキュービック相(Q^<224>相)を形成するモノオレイン(MO)の膜の相互作用を研究し、ペプチドの臨界濃度でキュービック相から二分子層膜(Lα相)への相転移を誘起することを発見し、すでに報告している(Langmuir,19,4745- 4753,2003)。これをさらに発展させるために、正味の電荷がpHにより変化するペプチドで電気的に中性の脂質膜の界面と相互作用するもの(ペプチドV)を新規に設計・合成して、キュービック相のMO膜との相互作用をX線小角散乱(SAXS)により調べた。ペプチドVの臨界濃度以上でQ^<224>相から別のキュービック相であるQ^<229>相に相転移したが、水溶液中のNaCl濃度を増大させるとこの相転移は抑制された。また、ペプチドVと脂質のモル比が0.02のとき、pH7ではQ^<229>相であったが、pH5以下ではQ^<224>相に相転移した。したがって、このペプチドVはpHによりキュービック相の安定性を制御することができる。 次に、負電荷を持つジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)を10%含むDOPA/MOの混合脂質膜は中性でQ^<229>相であるが、この脂質膜と高分子のポリリジンや新規に設計・合成した正電荷を含むペプチドIIとの相互作用をSAXSにより調べた。ともにある臨界濃度以上でQ^<230>相に相転移し、その格子定数はペプチド濃度の増加で変化しなかった。このQ^<229>相からQ^<230>相への相転移は生体膜においては新しいタイプの相転移である。 一方、Lα相の多重層リポソームを形成する30%DOPA/MOの混合脂質膜は臨界濃度以上のNaCl存在下でQ^<224>相に相転移するが、Ca^<2+>やLa^<3+>では相転移は起こらず、高濃度のイオン存在下でもLα相として存在した。
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