2003 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける分散能力の異なる昆虫類の遺伝的分化
Project/Area Number |
03F00315
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曽田 貞滋 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG Ai?bing 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 系統地理 / ミトコンドリア / オサムシ類 / 系統推定 / 種間交雑 / 地理的分化 / 東アジア / 生物地理 |
Research Abstract |
日本の多様な生物相は,中新世における日本列島の成立以降の複雑な地史的変遷の間の,大陸からの生物の移入と列島内での系統分化によって形成されてきた.日本列島の生物相の多様性を理解する上で,列島内での種分化の過程を詳細に明らかにし,分化を促進した地史的要因とそれぞれの生物群に特徴的な種分化機構を解明することが重要だが,それと同時に東アジアの大陸の祖先系統における種分化を比較検討することが,移入系統の由来と,大陸と列島での種分化過程の違いを明らかにするために必要である.本研究では,分散能力の異なるいくつかの昆虫群を材料にして,東アジアの大陸部と日本の姉妹群の地理的集団間の遺伝的分化・種分化をDNAシーケンシングによる分子系統学的手法で比較研究し,両地域での分化速度の違いを検討するとともに,分化速度に対する地理的・地史的要因,分散能力を含めた生態的特性のそれぞれの効果と相互作用を明らかにすることを目的としている.初年度は,東アジアの昆虫類の系統地理学的解析の一部として,現在手許にある韓国各地のオサムシ亜族のサンプルのうち,カブリモドキ亜属(ヤンコウスキイカブリモドキ,アオカブリモドキ)とクロナガオサムシ亜属(チョウセンコクロナガオサムシ,セイシンコクロナガオサムシ,チョウセンクロナガオサムシ)について解析を行った.エタノール保存したサンプルからDNAを抽出し,ミトコンドリアCOI領域のシーケンシングを行い、系統樹の作成およびNested Clade Analysisを行って,地理的分化の過程を推定した.その結果,カブリモドキ亜属では地理的分化とともに,祖先多型の種間共有もしくは交雑によるミトコンドリアの異種間浸透があることが推察された.
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