2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌における細胞外マトリックスと増殖因子との相互作用の解析
Project/Area Number |
03F00346
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
尾崎 岩太 佐賀大学, 保健管理センター, 講師
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 浩 佐賀大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 肝細胞癌 / インテグリン / アポトーシス / TGF-β1 / MAPキナーゼ |
Research Abstract |
我々は肝細胞癌の多く細胞外マトリックス(ECM)の蓄積した線維肝から発生すること、肝癌組織中には正常とは異なるECMが発現していることから、肝癌細胞における主要なECM受容体であるインテグリンの発現と機能およびその情報伝達系における増殖因子との相互作用を研究してきた。今回の研究計画では主として肝癌細胞におけるインテグリンと、増殖抑制的に働く因子TGF-β1との相互作用を検討、その情報伝達系の変化とアポトーシスの変化を解析した。その結果以下のことが明らかとなった。 (1)TGF-β1は通常では肝癌細胞に作用させるとMAPキナーゼのうちERK, p38を燐酸化し活性化するがこの効果は一過性のものであった。ところがインテグリンを過剰発現した肝癌細胞ではERK, p38,JNK/SAPKの経路のいずれもか活性化され、これにTGF-β1を作用させると3つの経路はいずれも恒常的に活性化されるようになることが明らかとなった。 (2)TGF-β1は通常肝癌細胞の増殖を抑制しアポトーシスを来たすが、インテグリンを過剰発現させるとTGF-β1によって誘導されるアポトーシスが著明に抑制されることが明らかとなった。 (3)インテグリンによるアポトーシス抑制にどの情報伝達系が関与するかを調べるため各情報伝達系に特異的な阻害剤を用いてアポトーシスがどのように変化するかを観察した。その結果、インテグリンによって活性化された3つのMAPキナーゼ系のうちERR, p38,JNK/SAPKを阻害するといずれにおいてもアポトーシスの抑制が解除され、特にp38の関与が大きいことが明らかとなった。 以上の結果からECMの蓄積や異常が肝癌細胞のアポトーシスを抑制しており、これにはMAPキナーゼの活性化異常が主要な役割を果たしていることが明らかとなったと考えられる。 (この成果は2003年10月の第54回米国肝臓病学会において発表した。)
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