2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規植物ホルモン、ジャスモン酸、の生理活性発現機序に関する研究
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03F00735
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上田 純一 大阪府立大学, 総合科学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SKRZYPEK Edyta Agnieska 大阪府立大学, 総合科学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ジャスモン酸 / エチレン / ガム物質 / 糖代謝 |
Research Abstract |
研究代表者らは、高等植物において多面的な生理活性を有するジャスモン酸について、これを新規な植物ホルモンの一つであることを提唱し、その生理活性発現機構について研究を行ってきた。本研究においては、ジャスモン酸類の特徴的な生理活性の一つである高等植物のガム物質誘導(形成)作用に注目し、その活性発現機構を植物ホルモンであるエチレンとの相互作用の観点から明らかにすることを試み、現在までに以下に示す結果を得た。なお、本年4月に開催される第9回国際花卉球根シンポジウムにてこれらの研究成果を発表する。 園芸植物として重要なユリ科のチューリップにさまざまな環境ストレスを与えるとガム物質を溢泌する。このガム物質は酸性糖(グルクロン酸)を含み、アラビノースとキシロースからなる多糖であることが研究代表者らによって明らかにされている。ジャスモン酸メチルエステルをラノリンペーストとしてチューリップの花茎に与えるとガム物質を溢泌した。また、この様なジャスモン酸のガム物質誘導効果はエチレンによって促進された。しかしながら、ジャスモン酸メチルエステルは内生エチレンレベルを上昇させるものの、外生的なエチレンによっては、ガム物質は誘導されなかった。さらに、チューリップ花茎にはジャスモン酸の存在が明らかにされたものの、エチレン処理によって内生ジャスモン酸レベルは変化しなかった。ジャスモン酸メチルエステルおよびエチレンはともにチューリップ花茎のクロロフィルの分解を促進し、老化を促進した。花茎に含まれる可溶性糖はジャスモン酸メチルエステルによって低下したものの、エチレン処理によっては低下しなかった。また、花茎における内生ジャスモン酸レベルはエチレン処理によっても変化しなかった。以上の結果から、チューリップ花茎におけるガム物質誘導はジャスモン酸メチルエステルによって誘導されること、エチレンは植物組織のジャスモン酸メチルエステルに対する感受性を高めることが示唆された。
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