2004 Fiscal Year Annual Research Report
日中両言語における人をさし示す言葉の対照研究-琉球方言、中国南方方言の比較研究を含めて-
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03F03009
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松本 泰丈 千葉大学, 文学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陳 露 千葉大学, 文学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ヒト名詞 / 名詞の複数表示 / 語彙の分類 / 類義語 / 地位名詞 / 人名 / 奄美大島方言(シマユムタ) / 中国の南方方言 |
Research Abstract |
本研究は、中国語、日本語のヒト名詞の全体を研究対象にして、意味的、文法的な立場からこれらをとりあげた。さらに、中国の南方地域の方言や琉球方言との対照研究なども視野に入れた研究を進めてきた。私たちは文献による研究のみならず、フィールドワークによる研究を大事に考えている。松本は2004年8月上旬、2005年1月中旬の2回にわたって奄美大島で奄美方言の現地調査を行い、陳露は2003年12月と2004年8月の計2回にわたり、中国の広東と広西地域に使われている粤方言について文字資料の収集及び自然会話の収録やインタビューを行った。 日本学術振興会特別研究員研究奨励費助成を受けて、この二年間の研究成果をまとめた報告書(論文を7本収録)を発行することになった。 名詞は、その語彙的な意味の中心で、動詞、形容詞が分担しないモノ、ヒト、トコロ、トキなどを指し示すことに加えて、中心から踏み出せば、動詞や形容詞ともかさなる、動作、変化、状態、性質などの領城にまで広がっているからである。しかし、名詞の名詞らしい意味的な特徴を取り上げるとしたら、日本語、中国語をはじめとする多くの言語において、広い意味でのモノ的な意味をめぐっての考察から始まることになるだろう。本報告書では、そのなかで、ヒトをさししめす名詞にかかわる日本語、中国語の事実をとりあげて検討した。 ヒト名詞をめぐる事実は、語彙的なものから文法的なものまで様々である。本報告書では、それを一方的に限定することなく、語彙的な事実も文法的な現象も併せて取り上げるようにした。一つの論考のなかで、両者にまたがるものもある。編者のうち松本は方言文法の記述に呻吟しているが、いっときの文法研究が内容をきりすてて形式をおうあまり、語彙的なものを無視して形式文法を志向していたことを批判的にみている。語彙的な側面へのめくばりぬきには文法研究が満足のいくものにならないことは、最近の文法研究でますますあさらかになりつつある。 名詞に関していえば、日本語の連語の記述、奥田靖雄「を格の名詞と動詞とのくみあわせ」にみられる、文法的(連語論的)な意味としてのむすびつきを区別するにあたっての名詞の一般化された語彙的な意味による-奥田はのちにこれをカテゴリカルな意味とよぶが-、モノ名詞、ヒト名詞、コト名詞の区別の例がわれわれのみぢかにある。本報告集をまとめるにあたっては、先行するこのようなたかいレベルの研究も、編者たちの視野にははいっていた。実際にその視点をもとりこんだうえで、中国語、日木語のヒト名詞の全体を体系的にあきらかにする作業は、今後共編者のひとりである陳露がすすめていくはずである。
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Research Products
(1 results)