2004 Fiscal Year Annual Research Report
高圧反応速度論を用いた液相電子移動過程の機構論的研究
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03F03070
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
浅野 努 大分大学, 工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHIHAB Mehdi S. 大分大学, 工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 電子移動 / 圧力効果 / 活性化体積 / 溶媒効果 / 動的溶媒効果 / ビオローゲン |
Research Abstract |
昨年度の研究により、窒素原子上にベンジル基を有するN,N'-dibenzyl-4,4'-bipyddinium塩は有機溶媒にある程度可溶であり、紫外線を照射することによって対アニオンからの電子移動が起こりラジカルカチオンを与えることが確認できた。従ってN,N'-dibenzyl-4,4'-bipyridinium chlorideについて逆電子移動過程(back electron transfer)の速度論的測定を行った。溶媒はアセトニトリル(AN)および炭酸プロピレン(PC)とした。得られた結果は以下のように要約できる。 1.反応は1次速度式に従って進行した。よってこの逆電子移動過程は塩素原子とpyridinylラジカルから成るラジカル対が原系であり、並進拡散によるラジカルの会合は速度論的に重要ではない。 2.1 atmではAN,PC何れの溶媒においても電子移動過程は圧力の増加によって促進され、活性化体積は25℃において-17cm^3 mol^<-1>(PC),-57cm^3 mol^<-1>(AN)であった。この事実は電子が移動した後の極性が高い状態を安定化するように溶媒分子が再配列された状態で電子が移動し、しかもその状態が原系と平衡状態にあると考えてよい、言い換えれば反応が非断熱的である、ことを示している。AN中の活性化体積の値がPC中より大きいのは両溶媒の等温圧縮率の違いによると考えられる。 3.AN,PC何れの溶媒においても速度定数が150-250MPaで極大値に達し、その後圧力の増加とともに減少した。これは、圧力の増加に伴って溶媒の粘度が増加して溶媒分子の並進拡散が遅くなったため、溶媒再配列が律速になったことを示唆する。しかし、本電子移動がmsの時間領域で進行する"遅い"反応であることを考慮すると、この解釈の妥当性には疑問が残る。 以上の結果を踏まえ、今後1)対アニオンとして塩化物イオン以外のイオンを用いる、2)窒素原子上の置換基としてベンジル基以外の炭化水素基を用いる、3)より高粘度の溶媒を用いる、などの変更を測定系に加え、新たな測定を行う必要がある。
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Research Products
(1 results)