2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体触媒の蛋白質内部空間導入による金属酵素の創成
Project/Area Number |
03F03268
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 芳人 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
REDDY Pattubala Adi Narayana 名古屋大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 銅金属錯体 / アポミオグロビン / シッフ塩基 |
Research Abstract |
当研究室では、これまでに得られた知見により、アポミオグロビン(補因子であるヘムを取り除いたミオグロビン)がある種のシッフ塩基錯体を容易にその空間内に取り込むことが分かっている。そこで本研究では、ある種の銅-シッフ塩基錯体を合成し、銅錯体のアポミオグロビンへの挿入反応を試みた。反応後のアポミオグロビンのESI-TOF, UV-Visスペクトルの結果からは、銅-シッフ塩基錯体がアポミオグロビン内に挿入され、安定な蛋白質-銅錯体複合体を形成することが明らかとなった。また、錯体配位子の置換基を親水性のヒドロキシル基から短鎖のアルキル基、芳香環まで様々に変化させ、複合体の安定性を比較したところ、立体的には不利であるにもかかわらず、芳香環を有する配位子のほうが安定な複合体を形成することが明らかとなった。このことから、アポミオグロビン内部に錯体が挿入する際には、芳香環とキャビティー内部のアミノ酸残基との疎水性相互作用が重要であるといえる。 生成した蛋白質-銅錯体複合体内の銅イオンは、銅(II)であるのでその酸化還元挙動を明らかにするためアスコルビン酸を用いて1価へと還元した。その結果、生成する銅(I)はシッフ塩基配位子から解離し、遊離の銅イオンとしてミオグロビン内部にトラップされることが分かった。ここで新たに生成する蛋白質-銅イオン複合体では、銅イオンが1価としてきわめて安定であり、空気中でも銅(II)への酸化には、数日を有することがわかった。このような酸化還元挙動を有する複合体はアポミオグロビンと銅(I)イオンとの直接反応では得られない。したがって、アポミオグロビンの内部には、あらかじめ錯体として導入された銅イオンのみがアクセス可能な配位座が存在し、その配位空間が銅(I)の安定化に寄与しているものと考えられる。
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