2004 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬のアルツハイマー病に関する治療メカニズムの解析
Project/Area Number |
03F03322
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
木内 一壽 岐阜大学, 工学部, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YU Hai 岐阜大学, 工学部, 外国人特別研究員
|
Keywords | 地黄 / GDNF / C6 glioma / ERK1 / 2 |
Research Abstract |
グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)は神経保護を有することが知られており、海馬ではカイニン酸処理により遺伝子が誘導されることから、アルツハイマー病などの治療薬としても期待されている。これまでに、認知症の治療によく使用されている漢方薬のなかで、地黄がC6 glioma細胞にてGDNF遺伝子の発現を上昇させることを見出した。すなわち、C6 glioma細胞を地黄1mg/mlの存在下で培養すると、GDNF mRNAの発現量は24時間で最大となり、この効果はGo6976(cPKC阻害剤)、Ro318220(汎PKC阻害剤)およびU0126(MEK阻害剤)により抑制されることを明らかにした。そこで本年度は、その発現誘導に係わる細胞内シグナル伝達経路をWestern blot法を用いて解析するとともに、地黄の細胞増殖に及ぼす影響について検討を加えた。 地黄1mg/mlの条件下でC6 glioma細胞を刺激し、ERK(extracellular signal-regulated kinases)1/2の発現量およびリン酸化について解析したところ、ERK1/2のリン酸化は刺激後3時間でピーク(対照群の6倍)となり、6時間目では対照群の4倍、12時間後には刺激前のレベルまで戻った。このERK1/2リン酸化の上昇はU0126にてほぼ完全に阻害されたのに対し、Ro318220では若干抑制されるものの有意差は認められなかった。また、Go6976ではERK1/2リン酸化は抑制されず、逆に上昇する傾向がみられた。従って、cPKCを介するリン酸化経路はMEK-ERK1/2の経路の上流にないことが示唆された。cPKC経路については現在検討中である。 一方、地黄のC6 glioma細胞の増殖速度に及ぼす影響について検討を加えた。地黄は0.25mg/mlの濃度では細胞増殖速度は24時間で対照群の約2倍、48時間で約1.5倍あることが明らかとなった。しかし、1mg/mlの濃度では細胞増殖速度は対照群の70〜90パーセントであり、ERK1/2の活性化と細胞増殖とは関連していないことが示唆された。 今後、地黄による誘導に係わるGDNF遺伝子のプロモーター領域を明らかにしたい。
|