2004 Fiscal Year Annual Research Report
低分子量G蛋白質M-Rasによる神経細胞分化と高次神経機能の分子機構
Project/Area Number |
03F03360
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
遠藤 剛 千葉大学, 理学部, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUN Peng 千葉大学, 理学部, 外国人特別研究員
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Keywords | M-Ras / Ras / 神経細胞分化 / MAPキナーゼカスケード / CREB / ADAR / RNA編集 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
PC12細胞において,NGFにより活性化されたM-RasはERK/MAPキナーゼカスケードを誘導し,さらに転写因子のCREBを活性化することにより神経細胞分化を引き起こした.Ras(H-Ras,K-Ras,N-Ras)も同様の経路で神経細胞分化を誘導することが知られている.そこでM-RasとRasとの相違点を明らかにするために,NGFによる活性化の差異を,M-RasとRasの標的蛋白質であるNore1に対するpull-downアッセイで調べた.その結果,RasはNGF刺激後即座に活性化され,30分後まで活性は維持された.その後活性は低下したが,6時間後以降活性は再び増大した.それに対し,M-Rasの活性状態は恒常的に維持されていた.NGF刺激後50分以内にERKカスケードを阻害すると,神経細胞分化が抑制されることが報告されている.したがってPC12細胞の分化誘導には,Rasではなく活性状態が維持されるM-Rasが重要である可能性が示された. M-Rasはマウス脳の海馬や小脳をはじめ中枢神経系に顕著に発現していたので,M-Rasがこれらの中枢神経系の神経形成や高次神経機能を制御していると推測される.M-Ras特異的な標的蛋白質として酵母two-hybridスクリーニングによりADARを同定した.ADARによる神経伝達物質受容体のRNA編集は,これらの受容体が正常に機能するために不可欠であることが知られている.そこで中枢神経系においてADARによるグルタミン酸受容体のRNA編集が,M-Rasにより制御されているかどうかを調べた.このRNA編集活性は恒常的活性変異体M-Ras(G22V)の存在下で2倍以上に増大した.したがってM-RasはADARを標的蛋白質として特定の神経伝達物質受容体のRNA編集を行うことにより高次神経機能を制御していることが示された.
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Research Products
(3 results)