2004 Fiscal Year Annual Research Report
陸起源脂質バイオマーカーの北太平洋大気エアロゾルと堆積物への寄与マッピング-現在と過去の環境変動
Project/Area Number |
03F03718
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BENDLE James Alexander 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 大気エアロゾル / 西部北太平洋 / 安定炭素同位体比 / ワックス起源炭化水素 / 石油起源炭化水素 / GC / IR / MS / 長距離大気輸送 / 堆積物 |
Research Abstract |
陸起源物質の北部北太平洋への大気輸送を明らかにするために、小笠原諸島・父島にて4年間にわたって採取された海洋エアロゾル試料中に存在する陸上植物バイオマーカーであるn-アルカンの安定炭素同位体比をガスクロマトグラフ・安定同位体比質量分析計(GC/irMS)にて測定した。以下に研究成果の概要を示す。 (1)陸上植物起源のn-アルカンは、冬から春にかけて高い濃度をしめすとともに、奇数炭素のアルカン(C_<27>,C_<29>,C_<31>)が優位を示した。これらの濃度は、一般に、夏から秋にかけて減少したが、エルニーニョ現象の強い年にはその濃度は増加傾向を示した。 (2)これらアルカンの濃度の変化は、偏西風と貿易風の強さで説明され、偏西風の強い冬-春には高い濃度を、貿易風が卓越する夏-秋には低い濃度を示した。 (3)またアルカンの安定炭素同位体比(δ^<13>C)は、-26‰から-35‰の間で変動したが、冬に高く夏に低いという季節変化を示した。この変動傾向は、大気輸送された陸上植物の起源域が季節によって変動することによって説明された。すなわち、冬にはアルカンは主に中国大陸から輸送されるのに対して、夏には東南アジアや北オーストラリアから輸送されると考えられた。この結果は、気象情報をもとにした流跡線解析の結果によって支持された。 (4)また、中国大陸の植物は主にC3植物(同位体比的に軽い)であるのに対し、東南アジアやオーストラリアにはC4植物(同位体比的に軽い)が多く繁茂することが知られている。今回得られたエアロゾル中のバイオマーカーの安定炭素同位体比の結果は、起源域の植生(C3,C4植物)と大気輸送の組み合わせによってうまく説明された。 (5)本研究から、現在の大気環境における西部北太平洋での陸上植物起源有機物の大気輸送過程に関する情報が入手できた。 また、日本から南極までの研究航海で採取した海洋エアロゾル試料(約40試料)についても同様の方法で分析を行い、アルカンの安定炭素同位体比を測定した。
|
Research Products
(6 results)