2004 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的拘束条件のあるメゾスコピック超伝導体における磁束の自己秩序と相転移現象の解明
Project/Area Number |
03F03755
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
門脇 和男 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BEN Baelus 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | メゾスコピック超伝導体 / SQUID磁気顕微鏡 / Ginzbur-Landau理論 / 巨大磁束 / 多重磁束状態 / トンネル接合 / 自己秩序化 / 磁束線の相転移 |
Research Abstract |
Ben Baelus氏がアントワープ大学から来日し、筑波大学で行った最も重要な研究は、巨大磁束状態(Giant vortex state)を、現実の物質Alのメゾスコピックな円盤を用いて計算し、実験家と協力してその存在を実証したことである。すなわち、メゾスコピックな超伝導体では磁束は単一に量子化された磁束として存在するよりも、複数量子が束になった巨大磁束状態が安定化する場合があることを、理論的に予想し、実験的に実証したことである。この結果はある程度曖昧な形で予測はされていたものの実験的な検証は、実験が困難なことから長い間、成功していなかった。 実験は、アルミニウムの微小円盤(直径1.5μm、厚さ33nm)に軸対称に5本の電極を、トンネル接合を介して作成した。この超伝導体に磁束線が侵入するとき、磁束線が遠く離れていればトンネル電流への影響は小さく、近ければ近い程、影響が強い。また、磁束配列が中心対称性を持つならどの接合を流れる電流もほぼ等しいから、接合に発生する電圧はほぼ同一値を採るはずである。このように、各電極からの電圧を磁束線の数の関数として測定すると、磁束線の配列、構造を反映して4つの電極の電圧がバラバラの振る舞いを示すが、ある磁束線の数以上になるとどの電極からの信号も全く同じ振る舞いをし、従って磁束線の配列が中心対称性を持つことが分かり、このような状態は巨大磁束状態以外あり得ないことから、巨大磁束状態の存在を実証した。 理論計算は2次元ギンツブルグ-ランダウ理論を用い、計算の都合上、メッシュを切り、2次元境界条件を満たすようにワークステーションによって数値計算を行い、微分方程式を数値的に解いた。計算結果はAlの試料で行い、ほぼパラメータなしに実験結果と一致することが分かった。また、磁場の上昇時と下降時の双方からも自由エネルギーを求め安定条件を検討した結果、ヒステリシス効果を含めて多磁束状態(multi-vortex state)から巨大磁束状態(Giant vortex state)が生ずることをはじめて明らかにした。
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Research Products
(11 results)