2004 Fiscal Year Annual Research Report
高温超電導体の強磁場応用をめざしたRE-Ba-Cu-O系材料の高性能化
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03F03852
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 要 京都大学, 工学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PAOLO Mele 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 高温超伝導 / 臨界電流 / 結晶成長 / ナノ材料 / 薄膜 |
Research Abstract |
一般に高温超伝導体は層状構造を持つことから異方性が強く,層に垂直方向をc軸,平行方向をa軸またはb軸とした時,c軸に平行に磁場が印加された時(B//c)に超伝導特性が最も弱くなる。そのため高温超伝導体を磁場中で利用する時は,c軸方向に磁場が印加された時のJ_cを向上させることが最初に検討すべき重要課題である。量子化磁束のピン止めに効果的な結晶欠陥はサイズが数ナノメーターで,数10nm程度の間隔で超伝導体中に分散している必要がある.さらに量子化磁束がヒモ状であるため,c軸方向に伸びた線状欠陥や面状欠陥はこれらのピン止めに有効に作用することが期待される。YBCO高温超伝導体に高エネルギーの重イオンを照射して,イオンの軌跡に沿って形成されるナノサイズの円柱状(コラムナー状)結晶欠陥をc軸に平行に多数導入することでJ_cを増大させた報告があるが,重イオン照射はコストが高く,実用的な線材製造には適さない。 これに対して本研究では薄膜の結晶成長プロセスにナノテクノロジーを適用して高温超伝導薄膜中に各種次元性を有するAPC導入を行う新プロセス開発を行った。ここではY_2O_3ナノアイランドを用いるナノテンプレート法を用いた。この方法では基板上にあらかじめY_2O_3ナノアイランドを形成し,これらを起点として薄膜中にc軸平行な1次元的結晶欠陥(1次元APC)を高密度に導入しようとするものである。実験では最初に,パルスレーザー蒸着(PLD)法によってSrTiO_3(100)単結晶基板上にY_2O_3ナノアイランドを形成させた。このとき基板温度は800℃,レーザーパルス数を5〜20パルスの範囲で変化させた。成膜後に原子間力顕微鏡(AFM)を用いて基板表面状態を調べ,またナノアイランド形成後にその上にYBCO薄膜を成膜してその結晶微細組織を透過型電子顕微鏡(TEM)で,また磁場中J_c特性を4端子法で調べた。レーザーパルス数制御により,基板上のナノナノアイランド密度をかなり自由に変化させることができることが明らかになった。ナノアイランドの形成により磁場中J_cが2倍程度向上した。これは超伝導薄膜中に導入された1次元APCが、量子化磁束を有効にピン止めし,その結果として磁場中でのJ_c増大を引き起こしたためと考えられる。
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Research Products
(2 results)