2004 Fiscal Year Annual Research Report
昭和期知識人における自律的知性の研究-アジア・民衆意識との関係を中心として-
Project/Area Number |
03J00044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡山 麻子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代日本 / 思想史 / 昭和 / 知識人論 / アジア / 民衆 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、昭和期知識人の中から、竹内好や保田與重郎に注目して、研究を進めた。特に、日本近代における西欧思想に依拠した「他律的」な思想から彼らの思想を区別する「自律性」について、彼らの思想におけるアジアとの関係のあり方を視野に入れて、分析を進めた。 そうした研究の一端は、2004年9月7日から10日まで、ドイツ・ハイデルベルクにて、ハイデルベルク大学とドイツ日本研究所(東京)との共催で開かれた国際シンポジウム、"TAKEUCHI Yoshimi - Thinker of a Different Modernity in East Asia?"(於Internationales Wissenschaftsforum Heidelberg)において、「竹内好の文学精神」として発表した。そこでは、日中戦争及び太平洋戦争の戦時下における竹内好の思想形成に焦点を当て、自律的な思想としての特質がどのように表れているかついて論じた。そして昭和10年代に形成された竹内の思想が、西欧から移入された思想に寄りかかることなく自律性を発揮しえた背景として、第一に同時代における中国と日本の「生きた」関係性の認識とそれに向き合う苦悩の中で思想形成が図られていたこと、第二に魯迅をはじめとする中国知識人の知性のあり様、すなわち民衆的地盤の心情をすくい上げてそれに支えられるという思想の存立形態や、政治との関係における文学の認識が学び取られていたことを指摘した。更に、思想形成期に表れた、そうした自律的思想の特質が、戦後における竹内の中国論、日本近代批判論等の思想的営為においても貫徹するものであることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)