2005 Fiscal Year Annual Research Report
昭和期知識人における自律的知性の研究-アジア・民衆意識との関係を中心として-
Project/Area Number |
03J00044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡山 麻子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代日本 / 思想史 / 昭和 / 知識人 / アジア / 民衆 / 竹内好 / 保田與重郎 |
Research Abstract |
今年度は、自律的知性の構築を目指した昭和期知識人の中から、特に竹内好と保田與重郎を取り上げ、両者の思想的関係性を明らかにするために、彼らの絶対的存在への意識をめぐる発想の分析を進めた。それを通してこれまで不明であった竹内好と保田與重郎の思想の内的連関、継承関係の解明への道筋を明らかにした。 そうした研究成果は平成17年6月25日に関西大学にて開催された比較思想学会第32回大会において、「竹内好と保田與重郎-絶対的なるものへの意識をめぐって-」として発表し、同論文は平成18年3月付けで刊行予定の『比較思想研究』第32号に掲載が決定している。そこでは竹内好と保田與重郎が共に自律的知性を成立させる根拠として、絶対者の措定をおこなっていたことを明らかにした。竹内好の場合、それは神学者北森嘉蔵らの著作の読みを通して、絶対者への信仰を持つ宗教者の論理構造の中から引き出されていた。他方保田與重郎の場合は、記紀の「自然」の中に見出した「神皇未分」の原初的混沌を絶対的なるものとし、それを絶えざる回帰の対象としていた。こうした両者の絶対者の措定は、絶対者の問題が曖昧な日本近代の思想的状況の中にあって、知性と文学の自律性を追求する方法であったことを指摘した。 また平成17年11月26日には愛知大学国際中国学研究センター主催の「中国学と現代中国学構築研究会」において、「竹内好研究の方法-日本近代思想史の立場から-」として研究発表をおこなった。そこでは魯迅論から毛沢東論に至る竹内好の中国研究において、魯迅や毛沢東がアジアの近代における自律的人間像として描き出されていることを指摘し、竹内好が日本近代の中にあって、中国を中心としたアジアとの関係の中から自律的思想の形成を試みていたことを明らかにした。
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Research Products
(1 results)