2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸部 篤 筑波大学, 大学院・人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | パラメータ / 用法 / 話し手 / 不定詞 / 理論化 |
Research Abstract |
昨年度までの研究においては、言語事象の記述を中心的課題とした。記述とは関与的要素の抽出であり、パラメータを設定する作業と考えることが出来る。しかし、各パラメータが他の用法との関連においてどのような価値を持つかという点は、用法という枠を前提としたために、検討することが難しかった。今年度は、用法より大きな枠のなかで事象を再検討することにした。 作業の出発点として、発話行為における話し手の機能を考察することにした。なぜなら、これまでの分析においても、通常の発話と話し手の役割が異なる点が明らかになっていたからである。それにより、これまでは先行研究として扱うことが難しかった論述を議論することも可能になった。 結果的には指令を表す用法、感嘆を表す用法、自問を表す用法を重点的に扱うこととなったが、それは話し手の機能を考える上でこれらが好適であったためである。それらの例を複合的に検討して明らかになったことは、話し手と発話の隔たりである。すなわち、あるタイプの独立不定詞節において、話し手は発話内容の構築に参与しないということである。さらに、その特徴は不定詞そのものの価値に由来すると考えることが出来る。この主張は、基本的には不定詞を語幹とする直説法単純未来と条件法の分析に通じる部分が多く、独立不定詞節の分析が時制論にも貢献しうることが明らかになった。 話し手という、これまでより上位のパラメータを設けることによって、いくつかの用法はかなり理論化しうる見通しがついた。しかし、たとえば語りの不定詞の用法において、話し手は完全に変質し、説明力を失う。これは理論化において大きな問題であり、他の、あるいはより上位のパラメータを見出すことが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)