2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸部 篤 筑波大学, 文芸・言語学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス語 / 不定詞節 / 支え / 発話 / 発話者 / 事行 |
Research Abstract |
今年度考察の対象としたのは、主に新聞雑誌記事などの見出しとして用いられた不定詞句である。 記事の見出しがそれとして機能するには、記事との位置関係や書体などの語用論的条件が必要であり、芸術作品のタイトルとの類似性を想起させる。Bosredon(1997)は絵画のタイトルに説明機能と命名機能があることを指摘しており、実際、書名や歌のタイトルとして用いられた不定詞句にはこれらの機能が認められる。しかし、記事の見出しは記事の名前ではなく、むしろ広告文的役割を担っている。ともにある種のメタテクストであり、説明機能は認められるものの、記事の見出しは読者に記事の価値を認めさせる修辞的発話なのである。 したがって、不定詞句の機能は、記事の価値付けという観点から行われねばならない。この立場から拙論は見出しの機能を三つに分類した。まず拙論(2002)において論じた説明的用法と類似するタイプがある。これは話法とは別のレベルで情報伝達を行うもので、読者の共感を期待する、文体的に特徴のある用法である。つぎに、直接的に記事の価値を訴えるタイプが見られる。このタイプは、解釈的には提案などを表すことが多く、価値付けの基準となる発話に先立たれ、不定詞句はその基準を支えにして有益な事例を示すものと理解される。最後に、辞書などの索引としての見出しがある。これはメタ言語的性質が顕著であり、事行概念のみを表すという不定詞の性質に適合する。本質的に範列的であり、読者にとっては希望する本文へ到るための目印として機能するので、このタイプは価値付けを行わない。 それ自体は価値付けと無関係である不定詞にとって、この用法は興味深い事象である。この考察によって独立不定詞節の用法は一通りの観察が終了したので、全体を見通した上での先行研究批判、記述の精密化および理論化の基盤が得られたと考えている。
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Research Products
(1 results)