2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00051
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸部 篤 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 独立不定詞節 / 不定詞節 / 発話者 / 評価主体 / 語り手 / 表現主体 / 知覚構文 |
Research Abstract |
昨年度は独立不定詞節を統一的に記述することを目標とし、それに必要な手続きとしてパラメータの設定を試みた。対話関係が存在しない当該事象について「話し手」という概念に着目したのは、特徴を明確化させることを意図したものであったが、必ずしも適切ではなかった。しかしその結果、話し手と発話の間に常に隔たりが存在することが明らかになった。今年度は話し手に替えて「発話者」という概念を用い、検討し直すことにした。 文法のレベルにおいて不定詞は発話行為と無関係であり、独立不定詞節の用法において発話者が発話内容の構築に参与しない点にそれは表れている。一方、発話者のステータスは評価主体、語り手、表現主体と大きく変動するが、それは共発話者のステータスおよび発話者と共発話者の関係も変動することであり、これが主原因となってそれぞれの用法を生じさせている。その意味で「語りの不定詞」の用法は、発話者が語り手として機能することにくわえ、特徴的な統辞構造をとることが義務的であり、文体的特徴だけでなく、こうした使用上の制約が生起頻度を低くしていると考えられる。さらに内容表示の用法においては、表現レベルにおいて文化的、社会的観点からも不定詞表現を考えなければならず、一種修辞的な要素が関与している。 知覚構文において、不定詞節は知覚される内容(知覚対象)であり、それは知覚され、発話者によって発話される。すなわち、独立不定詞節において確認された発話者と不定詞節との隔たりが、言語的に明示されるという冗長性が存在している。知覚構文中の不定詞節を独立不定詞節の延長上で検討すると、安定した統辞的環境を含めて、不定詞節としてはむしろ特殊であると考えられる。
|