2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J00153
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 志穂 筑波大学, 哲学・思想研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中国哲学 / 中国宗教 / 中国思想 / 道教 / 瞑想 / 張三〓 / 内丹 / 東洋医学 |
Research Abstract |
明清内丹諸流派に共通して用いられる功法・概念について、その意味・用法の異同を比較検討すると、そとに反映されている各流派に固有の、または共通の問題意識が浮かび上がってくる。この作業によって諸流派の思想的位置関係が把握され、明清の内丹思想が全体としていかなる方向へ向かおうとするものであうたのかを明らかにしうると考えられる。 以上のような研究方針に基づき、平成15年度は、清初まさには成立していたと思われる『張三〓先生全集』の三段逆行理論を主に取り上げ、明〜清初の他の内丹文献と比較検討した。その結果以下のようなことが明らかになった。他の多くの文献では「煉精化気」「煉気化神」「煉神還虚」(三段逆行)の初期段階とされている「築基」「煉己」という功法が、『張三〓先生全集』においては朱子の心性論をモデルとしつつ「性」の修養(精神的修養)と規定されていた。この「築基」「煉己」は三段逆行(煉気・身体的修養)と同時平行的に進行していき、丹薬完成という内丹の終着点において終結するものとされていた。そこには朱子学的「性」を内丹の主要対象に位置づけようとする意図がみられる。ただし、あくまで人間の内面のみを対象とする内丹理論であるがゆえに、『張三〓先生全集』は朱子学の主要概念である「理」に言及することを自覚的に避けていた。このことは、内丹思想が形而上的「理」を強く意識しつつも、気と密接にかかわる「性」の理論にとどまるという、極限的状況に到達したことを示している。『張三〓先生全集』は、明清内丹思想がより形而上的存対象を志向し展開したことの一つの極点たる事例といえるのである。
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Research Products
(2 results)